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【2017/06/26 15:58 】 |

( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです part15
5 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:04:17.98 ID:cxsFq5r00
先程から、体の震えが止まらない
あの太い光の柱のせいでも、九死に一生を得た安堵からでもない
いや、むしろ死ねばよかったかもしれない
CICのシート越しに、計器を覗き込む
レーダーは小さな点滅がいくつかと、自艦の回りに待機している戦艦以外になにも映してはいなかった
CIC「やはり"イシューリエル"ロストです。残留熱で多少影響はありますが、おそらく間違いないかと」
CICの一言一言が胸に穴を穿いていく
あいた穴から血が流れ出て、顔が青ざめ血の気が引いていく
あの砲撃でざわめいている艦内は暑いほどなのに、体が冷たい
ショボンが、死んだ……?
オットフリート「あのエリュシオンの艦はどうなっている?」
CIC「同じくロスト。おそらく両艦とも、交戦中に砲撃に巻き込まれたと推測します」
そうかと呟くように返すと、オットフリートは椅子に深く座りなおした
CICの返答を聞いても、顔色一つ変えはしない
むしろ面倒を片付けたような、一種の爽快感すら見て取れた

6 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:04:34.00 ID:cxsFq5r00
ヴィネ「父上、"イシューリエル"が……!」
水気を孕んだ情けない声で、オットフリートを振り返って言う
いまさらこんなことを言っても何も変わりはしないとわかってはいるが、何の痛みもかんじていない父に腹が立つ
私はこんなに悲しくて苦しいのに、なんでそんな顔をしているんだ
"イシューリエル"だけではない、地球連合艦隊はほぼ全滅し、この艦の強化ガラス越しに覗いた宇宙空間には数えられるほどの戦艦しか残っていない
それなのに何故と、潤んだ目で睨みつける
ヴィネの視線に気付いたのか、オットフリートはヴィネを一瞥すると、溜め息混じりに頬杖をついた
オットフリート「失った戦力などわずかだ。損失を悔やむより、仇討ちのことでも考えたらどうだ」
その言葉に、ピクリと反応する
仇?
……そうか、私は彼の仇をとってあげなければいけないんだ
優しかったショボン、唯一私を受け入れてくれたショボン、大好きだったのに、なのに……!
転化された深い悲しみが、激烈な怒りとなって身を焦がす
ショボンを焼いた光の奔流を、宇宙の人間たちにも味あわせてやる
先程まで溢れそうになっていた涙も既に乾き、その双眸には鈍い憎しみの色が宿っていた
絶対に許せない、必ず仇をとってやる
怒りに拳を震えさせているヴィネを見て、オットフリートは口元をかすかに歪ませ、鼻で笑った

7 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:04:50.93 ID:cxsFq5r00
敵をほぼ全滅させたというのに、気分がよくない
味方、仲間が多く戦死したからだとも思ったが、"ゴスペル"で仇をうてたというのに嬉しくもない
疲れているからだと無理矢理に思考を止め、それ以上考えることをしなかった
いや、したくなかったのかもしれない
俯きながら、とぼとぼと歩く
無機的な道の突き当たりにあった部屋に入り、ゆったりとした椅子に座って佇んでいた男に目を向けた
ブエル「ご苦労だった、ドク」
('A`)「ええ、まあ……」
ドクは今、攻撃拠点となっていた第五コロニーへと足を運んでいた
"ゴスペル"の攻撃で敵軍が消滅し、これ以上の戦闘続行はないだろうとして艦へ戻った
その後すぐ召集がかかり、こがたの宇宙船を使ってここへ赴いたのだ
あの時気の迷いでブーンに"ゴスペル"の事を教えてしまったことで、リザルトに影響がなかったことに胸を撫で下ろす
もしあそこで戦力の大半を削ることが出来ていなかったら、今俺はあの冷たく暗い空間で生涯を終えていたことだろう
……ブーンは、助かってしまったのだろうか

9 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:05:33.48 ID:cxsFq5r00
ブエル「良く生き残ったね。君の腕には感服するよ」
('A`)「恐縮です。……それで、何の用件でしょうか」
ブエル「ああ、そのことなんだがね……」
もったいぶるようにそう言うと、ブエルはデスクのスイッチに手をやり、後ろに設置されていたモニターに光が入った
不意に既視感に襲われ、眉根を寄せる
ブーンが地球に落ちる少し前、MSを受領する時だ
あの時は三人だったが
モニターに映し出された画像に眉根を寄せる
ブエル「V-201"フェイト"だ。君の階級の昇進と共に、これを受け取って欲しい」
その言葉に淡々と耳を向けながら、モニターを見やる
映し出されたMSは"ヘイト"の後継機なのだろう、フレームには共通点が多く、色は青と白になっていた
基本装備のビームサーベルとビームライフル、そしてシールド
そしてそれらの他に、背中に二対の巨大な砲身を抱えていた
それ自体がスラスターの役目も兼ねるのか、諸所にブースターが取り付けられていた
ブエル「新開発の兵器が装備されていてね、名を"ファンネル"という。無線式の、高機動自律兵器だ」
('A`)「……似たような兵装を使用しているMSが、戦域にもいました」
呟くようにそう言うと、誇らしげに口元をゆがめていたブエルが愕然とした表情でこちらに目をやった
ブーンを庇うようにして突如出現した、白いMS
それは何も無いはずの空間から、こちら撃ちかけてきた
おそらくこの自律兵器と、白いMSの牽制射撃を手伝った兵器は、大きさや形状こそ違え同系列の兵器なのだろう
情報の漏洩か、はたまた単純に似たものを作ったのか

10 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:05:58.13 ID:cxsFq5r00
ブエル「聞くが……それは何処の所属のMSだ?」
おそらく、エリュシオンのMSだろう
それがブーンと共に戦っていたということは、おそらくそれで間違いない
こちらにはあんなMSは無いし、白のMSは地球連合のMSを攻撃していた
脱走兵があのようなMSを奪取できるとも考えづらい
ならば、やはりだ
('A`)「さぁ、それはわかりかねます。単純に考えて地球軍では?」
あくまで淡々と、何も知らないことを装う
推測でしかないが、ブーンや白いMSに出会って生き残っているのは自分ぐらいだろう
後は"ゴスペル"に焼かれたか、敵と撃ち合ったかで死んでいった
相当ショックだったのか、ブエルはアームレストを握り締め、眉根を寄せている
その反応も当然だろう
新兵器を作ったと思ったら、敵に実践で先に使われてしまったというのだから
だがドクには、それに対して何の感情も浮かんではこなかった
それよりも、だ

11 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:06:19.04 ID:cxsFq5r00
('A`)「何故このMSを、先程の戦闘で使わなかったのですか」
未だ完成を見ていないのなら、今こうして受領をさせるために呼び出しなどしないだろう
ということは、既に戦闘が始まる前から使用することは可能だったわけである
('A`)「これがあれば、戦況も生存者も、多少リザルトに変化があったかもしれません」
それは不確定な要素で、必ずしもと力説できるわけではない
しかし、気に入らないのは戦力を惜しんだということだ
先程の戦闘、勝ちは勝ちだが、実際には痛みわけの引き分けのようなものだ
出撃したMSの9割以上が大破し、無事帰艦することが出来た兵もかなり少ない
言及するに連れて、怒りが湧いてくる
これは、裏切りだ
('A`)「囮ですか、俺たちは」
より多くの敵を"ゴスペル"の射線へと引き込むための、釣り餌だったということだ
隊が全滅し、敵が一斉に進行をはじめたところを薙ぎ払う
戦力差があまりにかけ離れていたのは、損害を少しでも減らすためだったのだ
あっけなくやられすぎず、粘って生き残ってしまい、この作戦に対する反発をされない程度の戦力
エリュシオンが突然介入し、戦力バランスが崩れたために俺は生き残れた
結果として、俺はブーンに助けられたようなものだ
階級の昇進も、所詮は体のいい機嫌取りにすぎない

12 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:06:46.18 ID:cxsFq5r00
ブエル「戦略上、仕方の無いことだ。君はそんなこと十分理解していると思っていたが……。それよりも、今度から君には大佐として活    もらう。肩の線に負けぬよう、頑張って……」
('A`)「いいんですか、俺みたいな子供が」
ブエル「強いことはいいことだ。君には、期待しているよ」
握手として差し出された手を無視して、踵を返し部屋を出た
何故こんなに苛々しているのか
兵士として、駒として死んでゆくことなどとうの昔に覚悟し、それも当然のことと考えていた
だがそれも、実際に捨て駒としての扱いを受けた今、これらを以前と同じようには考えられなくなっていた

13 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:07:43.02 ID:cxsFq5r00
小型のポッドで自艦へと戻り、腰を落ち着けようと自室へ戻る道をたどる
途中、談話室の前を通りかかった時、室内から話し声が聞こえた
何事かと中を伺うと、包帯でぐるぐる巻きになったパイロットを取り囲んで、生還と昇進を祝っているようだった
いたたまれなくなって、目を伏せる
クルー「あ、ドク中佐! 中佐も一緒に、こちらでお祝いをしませんか?」
扉のあたりで佇んでいたドクに気付いた女性クルーが、笑顔を振り撒きながらこちらに近づいてきた
('A`)「すまない、少し疲れているんだ」
雰囲気を崩してしまうわけにはいかないと笑顔を作り、申し訳なさそうに言う
そうですかぁと残念そうに顔を俯けたクルーに背を向け、談話室を後にした
宇宙連合軍とは、なんだっただろうか
宇宙に住むものが、自らの平和と独立を守ろうと組織したものだ
平和を手に入れるためには、敵を下す、勝てばいいのだ
だが平和を手に入れるために死んでいった人の平和は、何処にあるのだろうか
俺たちは、勝つために戦っていたのだっただろうか
平和を手に入れるために戦う、戦って死ぬ、死んだから平和を手に入れられない

14 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:08:05.18 ID:cxsFq5r00
≪今そなた等が行っている戦争は、何も生み出しはしない! 無意味な争いなど止めて、手を取りあう道を選べ! 互いに望んでいるものは、同じのはずだ!≫
('A`)「ブーン、お前は……」
アイベル「ドク、無事だったのね!」
顔を俯けて歩いていると、前方から声をかけられて顔を上げた
未だ松葉杖を手放せないでいるアイベルが、壁伝いにこちらに歩いてきている
歩み寄り、華奢なからだを抱きしめる
アイベル「よかった……」
アイベルの手から離れた松葉杖が、床に転がってからんと音を立てた
しばらく抱き合ったまま、アイベルの感触に浸る
もし先程の戦闘、彼女が出撃していたらと思うと背筋が凍る
出撃していればほぼ確実に死んでいただろう
あの戦闘のシナリオ自体に俺達の死が盛り込まれていたのだから
これでは、一体何が敵なのかわからない
俺の敵は、俺の世界を壊そうとする奴らだ

15 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:09:00.70 ID:cxsFq5r00
アイベル「……あら? 肩の線、増えてない?」
顔を近づけていたから気付いたのだろう、アイベルが言った
機嫌取りの一環なのか既に新しい軍服は用意されており、ポッドでの移動中に既に着替えていたのだ
からだを離すと、アイベルが微笑んだ
アイベル「ドク大佐、ね。どんどん偉くなるわね、あなた」
最初は私のほうが偉かったのにと笑うアイベルに、ドクも笑みを返した
自分のような子供が大佐などになるのは、異例のことだろう
誇るべきことではあるが、そんな気持ちは欠片も湧いてはこなかった
上層部の免罪符を、無理矢理押し付けられただけではないか
アイベル「さっきの戦闘、色々とあったみたいね……」
('A`)「ええ、まぁ……」
アイベル「次の戦闘には、私も出られるから。頑張りましょう」
その言葉に、思わずびくりと反応する
アイベルがどうかしたのと首をかしげ、あわててなんでもないとかぶりを振った

16 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:09:35.44 ID:cxsFq5r00
おそらく次が、この戦争の勝敗を決する決戦になるだろう
だからこそ、彼女には戦場にきて欲しくない
あの殺し合いの狂宴に参加すれば、アイベルは死んでしまうかもしれない
( ^ω^)≪殺されたら悲しいのは皆同じだお!≫
かつての親友の言葉が、胸に響く
出撃を止めれば、確かにアイベルは死なないかもしれない
アイベル「大丈夫かしら。疲れているんじゃない?」
('A`)「…………」
以前俺は、大切な人がいてこその世界だと言った
その考えは今でも変わらないし、これからも、無論死ぬまで変わらないだろう
俺は、何故戦っているのだろう
宇宙連合軍の勝利が、俺の世界の平和に繋がるから?
たしかにそうかもしれない
だがそれは、俺が偶然宇宙民だったからというだけの話だ
俺もアイベルも地球民だったなら、所属は地球連合だっただろう
やはり俺が戦う理由は、俺の世界を守るためでしかない
ならば戦いは、俺の世界にとって平和を脅かすだけのものではないか?
アイベルが出撃することに抵抗があるのは、戦いが死を、不幸を呼ぶからだ

17 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:10:06.31 ID:cxsFq5r00
('A`)「いや……。おそらく次の戦闘で決着がつく。必ず、守り抜いてみせるから」
少し困惑気味になっていたアイベルに微笑みかけ、そう言う
そう、たとえブーンの言葉が正しく聞こえようとも、認めるわけにはいかないのだ
裏切り者の、俺の世界を壊そうとしたものの言葉など
争いを無くすなど、所詮不可能なのだ
甘い言葉にすがっていては殺される
何かを守るためにいるのは、美麗で空虚な言葉じゃない
絶対的な、理不尽を跳ね除ける力
戦いに勝ち続けていればいいのだ、何も悩むことなど無いではないか
そう自分に言い聞かせ、アイベルに肩を貸して無機な長い廊下を歩き出す
……だがいつまで勝ち続ければ、幸せが見えてくるのだろうか
そんな考えを振り払うように、ドクは再びアイベルを抱きしめた
俺の世界を脅かすものは、全て排除するまでだ
地球連合もエリュシオンも宇宙連合も、そしてブーンも
害なすものは、消えてなくなってしまえ

18 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:11:07.94 ID:cxsFq5r00
得体の知らない白い機体と別れた後、先に行ってしまった"スルーター"を追ってゼノンは宇宙を彷徨っていた
"イシューリエル"が見当たらない
理由はよくわからないがレーダーはまともに機能せず、ツァールはツァールで勝手に先に行ってしまった
苛々しながら用を足さない計器を殴りつけ、ヘルメットを外して頭をがりがりとかきむしった
ゼノン「……はぁ」
こてんとパイロットシートに頭を預け、目を瞑る
そういえば、マナは無事だっただろうか
守ってやるなどと言ったくせに、自分の戦闘に気を取られてすっかり忘れていた
よもやあの光の柱に巻き込まれて死んでるなどということは無いと思うが、この目で無事を確認しなければ落ち着かない
探そうと思い至って体を起こすと、通信が入った
コックピット自体の暗さが、通信機に映ったツァールの表情の翳りを助長していた
ツァール「ゼノン……お父さん、見つけた……」
モニター越しに外を覗き込んでみると、少し離れたところに"スルーター"が佇んでおり、その向こうに小さく戦艦の輪郭が見て取れる
宇宙には空気が存在しないために遠距離にあるものもよく見えるのだと、出撃前にツァールに教わった
さっきの平方根とやらの時といい、いつ勉強してたんだ、あいつ?

19 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:11:24.99 ID:cxsFq5r00
ツァール「ゼノン……」
ゼノン「わかったっつの。今行くから、待ってろ」
フットペダルを踏み込みながら、通信機に向って呟く
大破したMSや戦艦の残骸が機体にぶつかって、コックピット内に金属質な音が響く
嵐に見舞われた船と、人々の死体
宇宙という大海原で、彼等は散っていった
我ながら詩的な表現だと悦に浸りながらも、小さく溜め息をつく
戦いを止めようなどと言っていた連中の気持がわからないでもない
機体を漂わせてこの凄惨な光景に見入っていると、鼻先をビームが一条掠めていった
突然のことに驚き、敵かと発射元に目を向けると、"スルーター"が腕をこちらに向けていた
ゼノン「ったく……」
早く来い、ということなのだろう
わざわざビーム撃つなよなどと思いながら、機体を駆って"スルーター"の後を追った
嵐に巻き込まれた人々、か……
起こした方の人間は、一体なんなんだろうか

20 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:12:01.90 ID:cxsFq5r00
大型戦艦である"イシューリエル"に比べると狭く感じるデッキに機体を寝かしつけ、リフトでコックピットから降り立つ
機体を見上げると、ポッドは破壊され、バズーカも破壊され、更には装甲も焼け焦げているという、なかなかに悲惨な状態だった
中破、ってところか?
整備士「うえ……あんまり壊さないでくれよ……」
ゼノン「修理のほう、頼むぜ」
損傷具合を嘆いている整備士の肩を叩き、デッキの出口で待っているツァールのもとに向う
ふと顔を覗き込むと、通信機ごしに見たときはわからなかったが、ツァールは青ざめて死人のような顔色になっていた
何事かと思い、内心どぎまぎしながら声をかける
ゼノン「お前、どうしたんだ? どっか怪我してんなら、医務室行かねぇと……」
言ってから、何故俺がコイツの心配しなければいけないんだとも思ったが、やはり心配なのでまあいいかと、らしくない言動に目を瞑る
どうせコイツは自分の不調を他人に自発的に言えるほど、積極的じゃないしな
眉根を寄せながら返答を待っていると、ツァールは小さくかぶりを振って、違うと呟いた
ツァール「負けたから……」
一瞬何を言っているのかわからず、はてと首を捻る
ゼノン「負けた?」
ツァール「撤退……したから……」
ゼノン「ああ……そゆこと」
ふと"ディザスター"の中破を思い出し、そういえば負けだなと改めて認識した
はぁと溜め息をつきながら、両手を軽くあげる

21 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:12:18.41 ID:cxsFq5r00
ゼノン「でもよ、俺たちは生きてるから勝ちだろ。まぁ負けたかもしんねぇけどよ」
試合に負けて、勝負に勝ったというやつだ
カテゴリーとしては敗北かもしれないが、それでも生きているということは勝ちだ
気を利かせていったつもりだったが、納得できないのかツァールは俯いたままだった
よくよく考えれば、痛み分けの判定負けのようなものなんだから、そう気にすることもないだろうと思う
だがコイツは、親の期待に沿えなかったと自分責めているのだろう
全く付き合えないと肩をすくめ、足取りの重いツァールの手を引っ張ってブリッジへと向った

22 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:12:48.27 ID:cxsFq5r00
自動扉をくぐって艦橋へと足を踏み入れると、クルー達の視線が集まった
俺たちは何処へ行っても歓迎されないんだなと、冷ややかな目線に苦笑する
まぁ、出生も素性もわからない、ただ人を殺すための武器のような人間だ、誰でも嫌悪するだろう
ツァール「お父さん……」
心底申し訳なさそうな表情を浮かべて、ツァールがおどおどとオットフリートに近づく
その様子に溜め息をつきながら、近くの壁に体を預けて腕を組んだ
ツァールとコンビを組んでいるせいか、オットフリートの顔はよく知っていた
オットフリートはツァール気がつくと、氷のように固まった無表情を溶かし、微笑みを浮かべた
頑張ったなと、ツァールが頭を撫でてもらっている
先程の死人のような顔色が嘘のように、ツァールは頬を朱に染めていた
その様子を見て複雑な気持ちになる
ツァールには受け入れてくれる奴がいる
俺には……

23 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:13:04.48 ID:cxsFq5r00
ゼノン「"イシューリエル"はどうなってんだ?」
先ほどからせわしなく計器を弄っていたCICに声をかける
CICは鬱陶しそうにこちらを一瞥すると、文書入力を中断して宙域図を引っ張り出した
CIC「"イシューリエル"はロスト。おそらく大破」
淡々とそう告げるCICにそうかと告げ、その艦所属のパイロットはどうなってると質問を加えた
正直なところ、"イシューリエル"がどうなっていようと構いはしない
無事を尋ねたのは、"イシューリエル"のログデータでパイロットの無事がわかるだろうと考えてのことだった
CICがキーに指を走らせ、詳細なデータを表示させた
CIC「パーソナルデータは消失しています。おそらく共に戦死かと」
それだけ聞くと、ゼノンは礼も言わずにシートから離れた
翳りを帯びた表情で、先ほどまで佇んでいた場所で再び腕を組んだ
マナ、死んだのか
普段気に入らないことがあれば、壁を殴ったり何かに当り散らししていたが、そんな気は起こらなかった
変わりに涙の一つでも流れるのかとも思ったが、それも出てくる気配はなかった

24 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:13:21.82 ID:cxsFq5r00
今までMAやMSに乗って敵を殺すのは、ただただ楽しいだけだった
敵を砕く爽快感、人を死に追いやる優越感
ゲームのようにそれらをこなし、快感に身を浸していた
そしてそれ自体が、ゼノンの存在意義でもあった
相手を無価値とし、自分の価値を確かめる
そして力として、自分は必要とされる
それ以上でもそれ以下でもない
ゼノン「守ってやるって言ったのにな……」
守るなどという単語が口から出てきたとき、内心少し戸惑っていた
戦うという行為に、はじめて自分以外のための理由が出来た瞬間だった
もしかすると、守るという行為に、自分の存在意義を見出せていたのかもしれない
誰かを守る存在であるということで、自分に価値が生まれた気がしていたのかもしれない
この不可解な空虚感は、自身の価値の喪失のせいだろうか

25 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:13:54.74 ID:cxsFq5r00
≪無意味な争いなど止めて、手を取りあう道を選べ! 互いに望んでいるものは、同じのはずだ!≫
マナが死んだのは、戦ったせいだ
それは至極当然のことで、俺自身仕方がないと理解している
弱肉強食、俺が唯一覚えた四字熟語
俺はマナに死んでほしく無かった
だが、戦って死んだ、もういない
そういえばあの白いMSも、戦いを止めろ云々などとと言っていたなと思い出した
何を馬鹿なことを言っているんだと聞く耳をもたず、俺は戦闘を続行した
しかしもしあの時戦いをやめ、マナの許へ向かっていたら、マナは……
ツァール「ゼノン、大丈夫……」
不意に話し掛けられ、現実へと引き戻された
父親と話して元気になったのか、顔を紅潮させているツァールに目を向ける
ゼノン「ああ、大丈夫だ」
ぎこちなく笑みを浮かべ、なんでもないようなふうを装う
ツァール「考え事……?」
訝しげ表情でツァールが顔を覗き込んできたので、まぁなと答える
めずらしいと馬鹿にしたような口調で呟かれたので、うるせぇと頭を小突いてやった
ツァールの言う通りかもしれない
俺なんかが今更思考を巡らせたところで、何の生産性もない
初めから俺の居場所など、血生臭い場所にしかないのだから

26 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:14:16.62 ID:cxsFq5r00
ゼノン「"イシューリエル"は沈んだんだろ。俺たちは何処に行けばいいんだ。"リンドブルム"に戻るのか?」
いつものように軽薄そうな表情を作り、一番偉そうにしている人間に話し掛ける
まぁ、どうせ"ディザスター"もまともに動かないだろうから、しばらくは足止めだろうが
艦隊長「"リンドブルム"はもうない。その件については追って通達する。今は休んでいてくれ」
オットフリートの手前邪険には扱えないからか、丁寧な口調でそう言った
もっとも、こちらを見る目にはさっさと出て行けと書かれていたが
そうさせてもらうと吐き捨て、ブリッジを後にした
どうせオットフリートのためだけの艦だ、空き部屋は多いだろうと適当に艦内を散策する
途中気だるさに襲われ、冷たい壁を背にずるずると座り込んだ
そうか、おっさんも死んじまったんだな
気に入らない鬱陶しい人物ではあったが、俺のことを少しは気にかけ、対等に話をしてくれた人間だった
昔は死んだ連中や、そいつ等の死を悔やむ連中のことを無能と馬鹿にしていたが、今はそんな昔の俺を嫌悪する
人が死ぬって、結構悲しいじゃねえか……
だが、マナやレギン、一応仲間だった地球連合軍の連中を殺した宇宙軍は酷いと、俺にそんなことを言う資格はない
人殺しが人殺しを否定するようなものだ

27 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:14:41.68 ID:cxsFq5r00
ゼノン「マナ……」
自嘲的な笑みを浮かべ、顔を俯ける
もう何もかもが遅い、どうしようもない
ツァール「どうし……たの……」
話し掛けられ、顔を上げる
咄嗟に表情を作り、誤魔化すように言う
ゼノン「あ、ああ……なんでもねぇよ。ってか、なんでお前がここにいるんだよ」
ツァール「部屋……一緒に……」
わざわざ追いかけてきたのか、小さな肩が上下している
大好きな親といるより、俺を心配してきてくれたということか
そうだろうと言及しても、否定されそうだが
ゼノン「……ありがとな」
ツァールに聞かれないように、口の中で呟く
今はこのまま、ツァールと一緒に戦っていられれば、それで満足だ
何の疑問も無く、ただ敵を殺している瞬間は確かに幸福で、満たされている
それでいい、それで問題はない、それで俺は満足なんだ

28 :ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/04/29(土) 23:15:46.78 ID:cxsFq5r00
ツァール「次……頑張ろ……一緒に……」
少し前を歩いていたツァールが、振り向いて言った
微笑みの浮かんだ表情に、思わずどきりとする
ゼノン「……ああ、次は俺たちが勝つ。絶対にな」
そう返して、拳を握って前に突き出した
ツァールはきょとんとしていたが、意を得たらしく同じように拳を作って、とんと打ち合わせた
マナを守るといった理由、ツァールに感じた複雑な思い
不安なんだ
戦争が終ったら、俺はいらない
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