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【2017/11/23 10:56 】 |

( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです part21
74 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:27:46 [ 9H9yDngk ]
気がつくとツンは、いつのまにかドッグに足を運んでいた
周囲を見回してみて、どこか自分の格好が浮いているなとツンは感じた
可愛らしいフリルのついたワンピース
作業着を着た男ばかりのドッグには、この格好は似つかわないだろう
そして一見して、彼女がパイロットなどとは誰も気がつきはしない
場違いな服装の少女は足取り重く、ドッグの中を彷徨っていた
ここにいる私を、私として必要としてくれている人はいない
なら私には、今やパイロットとしての価値しかない
拳銃やMSとなんら変わらない、無機質な武器としての存在だ

75 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:29:38 [ 9H9yDngk ]
ξ゚⊿゚)ξ「……アンタ、直してもらったの?」
ツンは顔を持ち上げ、呟くようにして言った
視線の先には、"レイジ"が佇んでいた
はじめて出会った時と変わらぬ姿になった"レイジ"は、ドッグの隅、ずっと主を待っていたのだ
別れはほんの少し前のことだったというのに、懐かしさが心を掠めた
ブーンとの別れと同じくして出会い、本当の意味で再会して時に別かれた機体
淡紅に彩られた脚部に、そっと頬を寄せる
ひんやりと柔らかな心地が、どことなく有機的な感覚を思わせた
ξ゚⊿゚)ξ「私もアンタと同じよ……」
ツンは"レイジ"の足を背にずるずると座り込み、目を閉じる

76 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:31:33 [ 9H9yDngk ]
いや、違う、同じではない
"レイジ"は、彼女はただこうして黙って佇んでいるだけなのだ
彼女を起こし、兵器として悪鬼に変貌させるのは、私たちだ
性質が悪いのは人間であって、彼女等の存在に罪はない
ただ偶然、武器の形をして生まれてきてしまっただけなのだ
しかしそれでも、人間は兵器を蛇蠍の如く忌み嫌う
それはきっと、兵器として存在するものに、自身の心の内にある残虐性を映し見るからなのだろう
兵器は、人間の殺意の結晶だから
兵器として生まれた彼女等も、いい迷惑だ
何のいわれもなく戦場にかり出され、終れば一転して鬼子と嫌悪される
見上げる"レイジ"の表情は、光の加減なのか少し、憂いを帯びて見えた
いつか、彼女らの持つ銃口から、弾が吐き出されることのなくなる時代が訪れるのだろうか

77 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:34:51 [ 9H9yDngk ]
「やぁ、整備の手伝いかい?」
背後からの聞きなれない声に、ツンは振り向かず少し眉をしかめた
エリュシオンにきて三日、声をかけられることは少なくはなかった
つまりナンパ、彼らは欲求不満なのだろうか
まったく猿のような奴等だと、ツンはそういう人間を嫌悪していた
それは裏返しに、自分が魅力的であるということ証明でもあった
それ自体少し嬉しくもあったが、時と場合を少しは考慮すべきだと思う
いい加減うんざりしている
ξ゚⊿゚)ξ「言っとくけどね、私はアンタみたいな軽ぅい男が大っ嫌いなのよ! 他の人をあたってもらえるかしら!?」
ツンは振り返ると、ヒステリックに怒鳴った
ドッグという場所柄、元々騒がしかったので、周囲には悟られないだろうとここぞとばかりに大声を出した
少し、すっきりとした
相手には悪いが、身から出た錆びだ
しかしとうの男の様子を伺うと、全く動じた様子はなく、逆に、何を言っているんだと言いたげに眉を寄せていた

78 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:37:51 [ 9H9yDngk ]
(´・ω・`)「別にそう言うつもりじゃないけど。ただ、君とは以前から話をしたいと思っていたんだ」
男はそう言うと、ふっと笑みをたたえた
ツンは改めて男を見直して、ぎくりと口元を抑えた
ξ゚⊿゚)ξ「アンタ……じゃなくて、あなたは……」
どこかで見覚えがある
そう、確か戦艦の中、ネルガルと話をしていた人だ
ξ゚⊿゚)ξ「もしかして、ブーンがいた艦の……」
(´・ω・`)「そうだよ。"イシューリエル"の艦長、ショボンです。ナンパじゃないから安心してね」
ξ゚⊿゚)ξ「あは、は……」
含みのある微笑みに、ツンは苦笑を漏らすほかなかった
しまった、また後先考えずに、しかも自意識過剰で罵声を発してしまうとは
きっと真面目な話をしにきたのだろう、今更に後悔する
誤魔化しの笑みも、ひくひくと引きつっている

79 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:39:52 [ 9H9yDngk ]
ξ゚⊿゚)ξ「すいませんでした……私、てっきり……」
(´・ω・`)「いや、いいよ、気にしないから。僕も不躾だったしね。それに君は確かに可愛いから、ナンパされてると勘違いしても仕方ないよ」
ξ゚⊿゚)ξ「え……」
その言葉に、思わず顔を赤らめる
ショボンはそんなツンを見て、くすりと笑った
(´・ω・`)「じゃあ、少しだけ時間をもらえるかな? 色々話をしたくて」
ξ゚⊿゚)ξ「え、あ……ちょっと!」
ショボンはそれだけ言うと、ツンの返答を聞かずにドッグの出口に向って歩き出した
まだ、いいとは言っていないのに
意外と強引な人なんだな、とツンは思った
それからもう一度"レイジ"を見上げて、ショボンを追って歩き出した

80 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:40:50 [ 9H9yDngk ]
ショボンはどうやら何処かに目的地があるらしいのか、こちらを振り返りもせずどんどんと進んでいってしまう
それでも歩く速さはこちらにあわせているらしく、置いていかれるようなことはなかった
しばらくすると、ショボンは昇降用エレベーターに乗った
ツンも付き従って中に入ると、既に1Fのボタンが押されていた
外へ出るつもりらしい
ξ゚⊿゚)ξ「あの、何処へ?」
(´・ω・`)「うん、ちょっとそこまでね」
ξ゚⊿゚)ξ「そこまで、ですか……」
それだけ話すと、会話は止まってしまった
エレベーターの中というものは、かくも皆無口になるものだ
気まずい沈黙を、操作ボタンの上にある緊急時の注意書きを見ることで紛らわせた

81 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:48:35 [ 9H9yDngk ]
外へ出ると、ショボンは伸びをし、潮風を思い切り吸い込んでいた
そんな彼の行動を見ながら、ツンは顔をしかめている
ξ゚⊿゚)ξ「で、結局何処へ?」
(´・ω・`)「そこだよ」
潮風になびく髪を抑えながら、ショボンの指差す方に顔を向ける
海の家のような小汚い娯楽施設の付近に、ぽつんと小汚いベンチが設置されていた
(´・ω・`)「海辺でお話って、告白みたいで素敵だと思わない?」
ξ゚⊿゚)ξ「素敵ですけど、潮風は髪が痛むので嫌です。しかも、あれ汚いじゃないですか」
(´・ω・`)「海はいいよね。海は地球が生み出した自然美の極みだよ」
ショボンがベンチに向って歩き出してしまったので、しぶしぶついていく
ああ、この人は話を聞かない人なんだな、とツンは溜め息をもらした
(´・ω・`)「どうぞ。レディーファースト」
すっと手を差し出して、ベンチに座るよう促される
仕方なくちょこんと端のほうに座ると、ショボンが隣に深く腰を降ろし、疲れを吐き出すように息を漏らした
そっと髪に手を触れると、ざらりとした砂の感触があった
ああ、最悪だ

82 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:50:09 [ 9H9yDngk ]
(´・ω・`)「さっき、そのあたりを走ってたよね」
そう言って、ショボンは砂浜の少し離れたところにある道路を指差す
昼間に昼食に入った食堂を抜け出した後、一心不乱に走っていた道だった
(´・ω・`)「昼間、ブーン君となにか言い合いしてたよね」
ξ゚⊿゚)ξ「見てたんですか」
(´・ω・`)「うん、まぁね。というか、現場にいたんだ。あそこの食堂、とんこつラーメンが美味しいらしいから連れてけ、ってうるさい奴がいてさ」
まぁ、そんな話はいいんだけど、とショボンは溜め息をついた
(´・ω・`)「とにかく驚いたよ。ブーン君と喧嘩でもしてるのかな」
ξ゚⊿゚)ξ「な、なんでそんなこと……」
ばつの悪いところを言及され、ツンは言い淀んで目を伏せた
ちらと海に目を向けると、夕日に照らされ、青は朱に染め直されていた
今朝見たときとは違う趣に、ツンは小さく感動を覚えた
しかし感動に浸る暇もなく、ショボンは言葉を続ける

83 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:51:13 [ 9H9yDngk ]
(´・ω・`)「僕の勘違いだったのかな? なんだか喧嘩してるように見えたんだけど」
ショボンが口元に笑みを浮かべながら首をかしげ、こちらを覗きこんでくる
いきなり呼び出しておいてこんなことを聞くのは不躾だろうと、ツンは眉を寄せた
だがそれでも、先程のドッグでの無礼があったので何も言えないが
ツンはショボン気付かれない程度に肩を落とした
ξ゚⊿゚)ξ「喧嘩って言うか、なんていうか。最近、ブーンはたるんでるんじゃないか、って」
ブーンを独り占めにしているマナに嫉妬しているんです
などとはとても言えず、咄嗟にもっともらしい理由を後付けした
そして同時に、こうしてこそこそと陰口を叩くようなまねをしている自分に嫌気がさす
はっきりとブーンに自分の気持ちを伝えれば簡単なことなのだが、受け入れてくれるという確証がもてない今、怖くてそんなことは出来ないのだ
情けない、いつから私はこんなに臆病になったのだろうか
というか、ただこんな話をするためだけにわざわざこんな所に呼び出したというのか
昼間の出来事もあいまって、また怒りが湧いて、そして落ち込んできた

84 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:52:14 [ 9H9yDngk ]
(´・ω・`)「要するに注意だった、ってこと?」
ξ゚⊿゚)ξ「え、ええ、まぁ……」
(´・ω・`)「ふうん、そうだったんだ」
ショボンの何処か含みのある相槌に、ツンは忸怩たる思いを抱いた
何が注意だ、馬鹿な
注意どころか、一方的で理不尽な理由で当り散らし、自分が引き起こしてしまった面倒の事の後処理まで押し付けてしまった
客観性と冷静さを取り戻した今となっては、自らの首を締めたくなるような思いに駆られる
嫌われたいのか、私は
(´・ω・`)「うん、まぁ、たしかにたるんでると言えばそうかもね。ここ三日間、彼はずっとマナちゃんと一緒にいるしね」
ξ゚⊿゚)ξ「え!?」
思わず語気を荒げてしまい、ツンは慌てて口元を抑えた
悟られてはいけない、気があるなんて思われたら、冷やかされるだけだ
出来るだけ平静を装って、努めて澄ました声を出す

85 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:54:55 [ 9H9yDngk ]
ξ゚⊿゚)ξ「ず、ずっと一緒なんですか?」
(´・ω・`)「うん。起きてる時は大体一緒にいるんじゃないかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「そ、そんなにべったりなの? ……ですか?」
(´・ω・`)「ですよ」
心なしか、ショボンはどこか楽しげに話している
それよりなにより、ブーンとマナが常時行動を共にしているとは知らなかった
確かにブーンを見かければ大体隣にマナがいたが、まさかそれほどまでに親密だったというのか
(´・ω・`)「でも、仲がいいことはいいことだよね。二人とも楽しそうにしているし。……まぁ、嫉妬してる奴もいるけどさ」
ツンは、ショボンが最後に何気なく足した言葉が自分のことを言っているのかと思い、どきりとした
嫉妬か、たしかにその通りだ
マナは自分より容姿も性格も優れているから、欠点を探して乏しめることも出来ない
彼女は自分にとって敵だったが、今は同志だし、ブーンにとっては私と同じく仲間だった
マナを否定できない以上、理不尽な怒り方しか出来ず、あんなことをしてしまって
私の立ち入る場所などないではないか
ツンは自分が極端なネガティブスパイラルに陥っていることにも気付かず、表情は翳りを色濃くしていった
横からツンの表情を観察してたショボンが、そんなツンの苦悩を感じ取って、納得したように頷き、口の端を持ち上げた

86 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 20:57:31 [ 9H9yDngk ]
(´・ω・`)「うん……一つだけ聞いていいかな。君は、なんでここに残って戦うことにしたんだい?」
尋ねられたツンは、当惑した表情でショボンに顔を向けた
(´・ω・`)「ブーン君に聞いたけど、君は宇宙連合のエースだったそうじゃないか。それなのに何故なのかな、ってね」
ξ゚⊿゚)ξ「それは、その、えっと……」
ここに残ったのは、ブーンが残ったからだ
などとはいえず、再び咄嗟にもっともらしい理由を、と思ったのだが、いい案は浮かんでこなかった
今まで、こうして誰かに真意を問われたことなどなかったのだ、仕方がない
しっかり建前を考えておくべきだったかもしれない
ξ゚⊿゚)ξ「私も戦争はよくないな、って思って、それで……」
(´・ω・`)「……ホントにそれだけ?」
ξ゚⊿゚)ξ「それだけですけど……」
本当は皆のように、高尚な大義など持ち合わせなどいないのだ
戦争だって、私に影響を及ぼさないのなら、どうだっていいと思っている
誰が苦しもうが悲しもうが死のうが、私には関係ない
中立で戦争を止めようだなんて、流されただけの私は立派でもなんでもない
ξ゚⊿゚)ξ「ってか、さっきから何をニヤニヤしてるんですか?」
先程からこの男は、ずっと口元を緩ませたままでいる
気付かれないようにしていたのだろうが、私にはそんなものお見通しだ

87 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:00:09 [ 9H9yDngk ]
(´・ω・`)「え、そう?」
などと、とぼけるように笑うショボン
ツンは目を細め、眉間に皺を寄せた
ξ゚⊿゚)ξ「キモいです」
(´・ω・`)「え、ちょ、それは流石に酷い……」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなに私がおかしいですか?」
じとっとしたツンの剣幕は、子犬すら裸足でそっぽを向く程の迫力だった
むきになるツンに、ショボンは失礼だったねと苦笑した
また笑った! とその苦笑いにすら反応し噛み付くツンに、とうとうショボンは噴き出した
(´・ω・`)「やっぱり似てるよ、君は。僕の彼女に」
つぼにはまったのか、くつくつと笑い続けている
突然何を言い出すのかこの男は、わけがわからない
脈絡もなく、意味もわからない理由で笑われていたとわかったツンは、更に顔をしかめた
はじめ自分が彼に失礼をしてしまったことなど、ツンの頭には既にない
ξ゚⊿゚)ξ「彼女なんていたんですか」
(´・ω・`)「悪かったね、冴えない男でさ……」
先程までの笑顔と一転して、ショボンはがっくりと肩を落とした
ざまあみさらせ、人を笑った仕返しだ
しかしその辺りは大人の男の余裕なのか、ショボンはすぐに気を取り直し、話を続けた

88 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:02:05 [ 9H9yDngk ]
(´・ω・`)「まぁ、僕が冴える冴えないはどうでもいいんだよ。とにかく似ててさ、少し懐しくなったんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……。どんなところが似てるんですか?」
(´・ω・`)「んー、まぁ、簡単に言えば、嫉妬深いところとか、世間知らずなところとか、視野が狭いところとか、自己中心的なところ……などなどかな」
一つ一つ指折りに数えながら、ショボンは空に目を向けて言葉を紡いでいく
それらを聞いて、ツンは更に深く深く眉根を磁石のように近づけた
ξ゚⊿゚)ξ「欠点ばっかりじゃないですか」
というか、そんなのと付き合っているこの男は、マゾヒストの馬鹿なのか
そして、そんなのと同系等の人間といわれた私は、馬鹿なのか
まったくもって憤慨だ
(´・ω・`)「たしかにそうだね。でも、少しは心当たりがあるんじゃないかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「なっ……!」
好き勝手に言ってくれる
だがまぁ、たしかに自覚がないわけではないが
自分勝手な理由で嫉妬し、怒って、八つ当たり
あれ、まさに私じゃ……

89 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:04:20 [ 9H9yDngk ]
(´・ω・`)「……僕の彼女はさ」
ξ゚⊿゚)ξ「長くなるんですか?」
(´・ω・`)「ま、まぁ、そう言わずに聞いてよ」
ショボンは不満げなツンの顔から目を逸らすと、こほんと咳払いをして気を取り直した
(´・ω・`)「僕の彼女はさ、自分で物事を考えない人なんだよ。誰かに依存しないとダメなんだ。それでいて、その依存相手に嫌われないよう、無くさないように必死でもがく。それは愛情かもしれないし、確かに好意から来るもので嬉しいんだ。でも……」
ショボン言葉を、ツンは口を閉じて聞いていた
夕日が飲み込まれるように、海に沈みかけている
綺麗だ、と感じた
(´・ω・`)「彼女は自分の世界の中心に、他人を据え置いてしまっているんだ。そしてその周囲に、彼女が漂ってる。彼女の世界はそれだけ。それは彼女の生い立ちのせいでもあるんだけれど、愚かなことなんだ」
ショボンが何を言いたいのかを掴みかね、ツンの頭は軽く混乱していた
(´・ω・`)「彼女は誰かの目からしか世界を見ていない。だからその依存相手を盲目的に信じ、行動する。彼女は、自分の目で世界を見つめ、考えなくちゃいけないんだ。何が正しくて、自分はどうするべきなのかを。そして依存してしまっている相手を知らなくちゃいけない」
ショボンは、そこで言葉を切った
それから黙り込んでしまったので、二人の間に沈黙が流れる

90 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:07:50 [ 9H9yDngk ]
ξ゚⊿゚)ξ「……よくわかんないですけど。私がそうだ、って言うんですか?」
(´・ω・`)「さぁ、それはわからないな。人の心の中って言うものは、かくも計りがたいものだからね」
自分から話したくせに、と突き放すような言い方をするショボンに、ツンは釈然としないものを感じた
彼の言う彼女と、自分には共通する部分があるのだろうか
依存、好き
私はブーンの価値観に依存しているだけだ、と言いたいのだろうか
(´・ω・`)「話はおしまいだよ。ごめんね、つき合わせちゃって」
ショボンはベンチからし腰を浮かし、ぐっとのびをした
そして、座り込んだまま難しい顔をしているツンを、慈しみを込めた目で見下ろした
(´・ω・`)「最後に一つ。世界は、全てが対になって出来ているんだ。だから、どちらかだけでは、何かをすることは出来ないんだよ。まだよくわからないと思うけれど、君たちはまだ間に合うはずだから」
それだけ言うと、ショボンは片手を上げて帰っていってしまい、ツンは海岸に一人取り残されてしまった
夕日の朱が、名残惜しむようにゆっくりと水平線に引いていく
ブーンの価値観、意思、想い
私は知った気になっていただけなのだろうか
太陽が完全に没し、月明かりが差すようになったころ、ツンはベンチから立ち上がった
ぼんやり海を眺めている場合ではない
私はちゃんと、彼と話す必要があるはずだ

91 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:10:43 [ 9H9yDngk ]
ツンは一度自室へと戻り、シャワーを浴びてからブーンの捜索を開始した
面動で仕方なかったので、髪のセットはせずに部屋を飛び出した
大方ブーンはトレーニングルームにいるだろうと考え、ツンは足を速めた
しかし予想は裏切られ、トレーニングルームには誰もおらず、そもそも開いてすらいなかった
中から何か大声が聞こえたが、ブーンのものではないと判断し、ツンはそこを離れた
ブーンのことだから、ここに篭って訓練でもしていると思ったのだが
ならばドッグだろうかと思い至り、ツンは小走りでそこへ向った
ξ゚⊿゚)ξ「あ、あれって……」
ドッグへ向う長い廊下の前方に、長い黒髪をたたえた女が歩いていた
マナ「あ、ツンさん、こんばんは」
やはり、と思った
マナはツンの足音に気がついて振り返ると、軽く頭を下げ、ツンに近づいた
気まずさからツンはマナを正視できず、小さく頷いて挨拶を返す
マナは先程のことなど気にしていないのか、相変わらず普段の優しげな表情をしている

92 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:11:27 [ 9H9yDngk ]
ξ゚⊿゚)ξ「昼のことだけど、悪かったわ。……私、馬鹿だった」
目を逸らせたまま、謝罪の意を告げる
マナは予想通り、気にしていないですよ、といい人振りを発揮して、私の愚考を許した
やはり私ではかなわない
私はこの人のように優しくもないし、綺麗でもない、ショボンの言うとおりのダメ女
彼女こそ、ブーンに愛されるべき人間なのだ
自然と頭が下がって、伏目がちになる
敗北者の様相だ
マナ「あの、私ツンさんに一つ、言っておきたいことがあるんです」
マナの言葉に、ツンは顔を上げる
マナ「内藤さんは、私のことが好き、というわけではないんですよ」
少し残念そうに微笑みを浮かべると、マナは言った
突然の告白とその内容に、ツンは当惑し、眉をひそめた

93 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:15:06 [ 9H9yDngk ]
ξ゚⊿゚)ξ「な、何を言ってるの? そ、そもそも、いつ私がアンタとブーンの関係を教えてくれなんて言ったのよ」
大体、その口ぶりでは、私がブーンのことを好きだと知っているようではないか
しかも妬いているのを知っているような言い方だ
マナ「すみません、私が言いたいんです。少し、聞いていただけますか?」
だがまぁ、聞いて欲しいなのら、聞いてあげようじゃないか、仕方ない
それに、元々気になっていたことでもあったので、ツンは首を縦に振った
マナはある程度、ツンの扱い方を理解していた
ツンが頷いたので、マナはありがとうございます、と頭を下げた
マナ「内藤さんは、私ことが好きだからという理由で、私を気にかけてくれているというわけではありません」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあなんで。まさか、既成事実……」
マナ「いえ、そういうわけでは……。内藤さんは、私の兄を殺してしまったんです……。ですから、彼はそれで自分を責めているんだと思います。私を大事にしてくれるのは、兄を奪ってしまったせめてもの償い、ということなんでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ「お兄さんを……!?」
マナの話を聞き、ツンは絶句して言葉を失った
そんなことがあったのかと、同情を孕んだまなざしでマナを見つめる
だが、ということは、ブーンが宇宙連合軍を裏切ったのは、マナが脅したからではないのか?
まさかこの女がとも思ったが、口にしてみる

94 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:17:33 [ 9H9yDngk ]
マナ「いえ、私は自分の口から、内藤さんが私の兄を殺したとは言っていません。内藤さんの記憶が戻った時に、内藤さん自身の口から、それを私に伝えてきました」
それなら何故と、ツンは釈然せず、話を続けるよう目で促した
マナ「内藤さんは、とても責任感の強い人なんですよね。自分に出来ることがあるのに、それをしないのはダメだと、そう感じたんだと思います。劣勢にあった私たちを、助けずにはいられなかったのでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ「……そう、だったんだ」
そのことを、ツンは誇らしく思った
あの時、敵として現われたブーンと対峙した時、殺してしまいたいと憎んだことすらあった
私たちを裏切って、敵軍に協力するなんて、と
だがその実、やはりブーンは、たしかに私の好きなブーンだったのだ
人のためになるならと、一心不乱に頑張る人間
今も昔も、記憶がなくなったときでも
マナ「内藤さんは、嫌なんだと思います。戦争で人を殺して、仮初めの平和を手に入れたとしても、本当に心から幸せだとは感じられなくなってしまうことが。それでは、私と内藤さんのように、決定的な、癒えない隔たりが出来てしまうから」
ブーンは優すぎるのだ
おそらく地球連合兵として、元々は仲間だった私たちと戦っている間も、きっとずっと辛い思いをしてきたのだろう
それでもだましだまし、実際に手の触れられる、声が届く場所にいた彼女たちを助けるために戦った
ブーンは本当に、心の底からのお人よしの、馬鹿だ
そう罵りつつも、ツンはそれを嬉しく思った

95 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:18:36 [ 9H9yDngk ]
ξ゚⊿゚)ξ「そっか。全部、私の勘違いだったってことか……」

彼にとって、世界に生きる全てのものが、等しく愛しい、守りたい、死なせたくない存在なのだ
それが彼の価値観、だからこそ、片方しか守ることの出来ない二極を抜け出して、ここにいる
彼がこの道を選んだのは、偽善でも利害でもなく、必然だった
全てが幸せを享受する世界でこそ、彼は幸せになれる
私もやはり彼と、彼の守りたいものを守りたい
結局、結論は同じだ
だが、これは彼への依存ではなく、私の意思
全ての中から特別として選んでもらうのは、全てが終ってからでも遅くはない
このとき初めて、ツンはショボンの言わんとするところを理解できた
全体があるから、特別が存在する
世界があるから、愛しい人がいる

96 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:20:01 [ 9H9yDngk ]
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとついてきて」
マナ「あ、え……?」

ツンはマナの腕を掴むと、ぐいぐいと引っ張って歩き出した
ドッグへと入ると、ツンは確信めいた足取りで進んでく
マナはツンの意図を解することが出来ず、半ば引きずられるようにしてドッグを横切っていく
しばらく進んだところで、ツンは歩くのを止めた
そこはドッグの隅、彼女の使っていた剣が佇んでいる場所
淡紅の機体を見上げ、ツンは満足げに微笑んだ

ξ゚⊿゚)ξ「V-103"レイジ"よ。マナが乗ってた地球連合の機体なんかより、ずっと強いわ」
マナ「え……これを、私に?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、マナが使って」

ツンの申し出に、マナは困惑した表情をみせた
マナが乗っていた機体は、"ヘル"の試作機
スペックも武装も、"レイジ"の方が、圧倒的ではないにせよ上だ
ツンは表情を和らげると、マナの片手を取った

97 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:22:08 [ 9H9yDngk ]
ξ゚⊿゚)ξ「私も、あなたには死んでほしくない。だから、この子を使って」

肉親を殺されて、仇が目の前に現われて、私ならきっと絞め殺していた
だが彼女は微笑み、凛として、憎しみの感情など微塵もうかがわせない
何故私は気付かなかったのだろう、マナという人間が、こんなにもき然として美しい人間なのだと
無理もない、気がつけるはずがない
彼女を敵として見ていた自分に、真に彼女が見えるはずがなかったのだ
その視点からでは、敵という認識以外生まれない
突然手を握られたマナは、少し驚きつつも、ツンの態度の変化を好意的に受け止めていた
マナはありがとう、と微笑みを漏らし、あいていた手でツン手を包んだ

ξ゚⊿゚)ξ「い、言っとくけど、貸すだけなんだからね! 壊したりしたら、絶対に許さないわよ?」
マナ「はい、わかりました。約束は、絶対に守りますよ」

二人は、互いに顔を見合わせると、破顔一笑した
友情の発露を、ツンは感じていた
彼女とは戦争が終ったあとも、ずっといい友人でいられると、奇妙な確信があった
守ろう、この人も
きっとそれは、彼女のためだけではなく、私のためでもある
自分が幸せになるために、相手を幸せにするために、愛があり、絆がある
規模は異なれど、それは全てに通ずること、全てを巻き込むこと
そう、きっとブーンも、同じ想いなのだ

98 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:23:59 [ 9H9yDngk ]
( ^ω^)「おーい、マナちゃーん!」

視界の外から声が聞こえてきて、二人はそちらに目を向けた
どことなく疲れた様子のブーンが、こちらに向って走ってきていた

( ^ω^)「あ、ツンも一緒だったのかお? って、どうしたんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「なにがよ?」
( ^ω^)「手なんかつないじゃって……」

ブーンは視線を落とすと、二人の繋がれた手に目をやった
ツンとマナはそこで急に気恥ずかしくなって、ぱっと手を離した

マナ「あ、そ、それで、一体どうしたんですか? 私に用があったみたいですけど」

話題をらせようと、マナがブーンに言った
するとブーンは気まずげに口ごもり、もじもじとしだした

ξ゚⊿゚)ξ「なによ、気持ち悪いわね。さっさと言いなさいよ」
( ^ω^)「いや、実はそのね……やったのは僕じゃないんだけどね、実は、その……」
ξ゚⊿゚)ξ「だからなんなのよ、焦れったいわねぇ!」
( ^ω^)「"ヘル"、壊しちゃったんだお……」

その言葉にマナがピクリと反応を示すと、ブーンは弾かれたように膝を折り、額を油の浮いた床に擦り付けて土下座した
思えば、あの時トレーニングルームに響いていた怒声は、ブーンが叱責されていたときのものだったのかもしれない
気付くと、マナがあわててブーンに駆け寄り、そんなことしないでくださいとなだめていた

99 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:25:37 [ 9H9yDngk ]
マナ「"ヘル"のことは気にしないで下さい。元々、もらい物でしたし……。それに今は、この機体を譲っていただいたので、まだ私も戦えますから」

マナの言葉に、ブーンは頭を上げた
そして"レイジ"を見上げると、驚いたようにツンの方に目を向けた
その視線にツンは照れて、さっと目を背けた

( ^ω^)「この機体って、確かツンのじゃ……」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよ。なんか文句あるの?」
( ^ω^)「いや、ないけど……。でも……」

もう一度ブーンは"レイジ"を見上げると、首を捻った
そのうちなにかに気がついたのか、ぽんと手を打ち合わせた

( ^ω^)「ツンがトランプで負けたんだお! ツン、昔から引き運がなかったお」
ξ゚⊿゚)ξ「それはひっとしてギャグで言ってるのかしら?」
( ^ω^)「冗談ですお……」

そうは言ったものの、半分本気でそう思っていたのか、ブーンは再び首をひねった
一向に答えが出てきそうになかったので、ちょんとマナを小突く
わかりました、とマナは小さく笑った
悪かったわね、自分で言うのは恥ずかしいのよ

100 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/17(土) 21:27:08 [ 9H9yDngk ]
マナ「内藤さん、この機体は私とツンさんの……そう、友情の証なんです」
( ^ω^)「友情? 仲良くなったのかお?」
マナ「ええ、そういうことです。和解、といったほうが正しい気もしますけれど……」

話を進める二人を眺めながら、ツンは苦笑していた
友情の証だなんて、なんと恥ずかしいことを言うのか
案外抜けているところもあるんだな、などと思いながら、ツンは"レイジ"を見上げた
ねぇ"レイジ"、アンタ兵器なのに、友情の証になれたわよ
初めてアンタに会った時、私はアンタを要らない、なんて思った
でも、今こうしていると、アンタと一緒に戦ってきた時間は、決して要らないものなんかじゃなかった
感謝してる、これからは、私の大切なものを守って戦ってほしい
ありがとう、今まで、そしてこれからも、よろしく

( ^ω^)「ツン、そういえば可愛い服着てるお。凄く似合ってるお」
ξ゚⊿゚)ξ「……言うのが遅すぎるのよ、馬鹿ブーン」

"レイジ"の表情は、光の加減かどこか、嬉しそうに微笑んでいるように見えた
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【2006/06/18 11:17 】 | ( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです | comment(0) | trackback(0)

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