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【2024/04/20 02:15 】 |

( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです part19
34 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:16:46 [ I8.hcAPY ]
青い空、白い雲
陽光を受けて煌びやかに輝く海、柔らかなぬくもりの感じられる海
水平線を一人眺めながら、ツンは思い切り顔をしかめていた
物凄く苛々する、こんなときだというのにブーンは少し浮ついているのではないか?
やけにマナと親しげにしていると思ったら、ヱイルと一緒に部屋にいて
しかもヱイルは、タオルをまいただけの格好だった
単に自分がのけ者にされているから怒っているのだが、ツンはそれを風紀的な乱れに対しての怒りに転化していた
昔は、自分がブーンの行動を把握できなかったことなどはなかったのに
ブーンが大気圏へ落ちて一時的に敵側へ回った時から、ツンの知りえない時間が増えた
ツンはそれが気に入らないのだ

35 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:18:03 [ I8.hcAPY ]
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの、馬鹿!」
手元の砂を叩きつけ、手一杯にそれを握り締める
鬱屈した感情を押し込み、海へ投げつけた
しかしそのとき一陣の風が走り、投げた砂はツンのもとへと戻っていった
寄せて返す波の音が、砂まるけになったツンを嘲笑うように響く
ツンはがくりと首を落とし、今朝綺麗に整えたばかりの髪から砂を滴らせた
ξ゚⊿゚)ξ「……くっ……なんなのよ!」
激情にもう一度砂を握りしめる
しかしすぐに脱力し、握った砂は元の場所へと戻っていった
なんと惨めなのだろうか、私は

36 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:18:23 [ I8.hcAPY ]
ξ゚⊿゚)ξ「シャワー、浴びよっかな……」
髪をかきあげて、砂を払い落とす
潮風と巻き上がる砂で、髪が痛んでしまう
ツンはデニムについた砂を払いながら、ゆっくりと立ち上がった
海を見ていれば気が晴れるかもしれない、そう漠然と考えていたが、どうやらそれは私には向いていないということがわかった
風流だとか趣があるとか、それは苛立ちを増長させる要素にしかなりえない
そういう感動は、私には不向きだ
見ていても波の動きに心奪われることもなく、結局手持ち無沙汰になって余計なことまで考えてしまう
だが、苛々するとわかっているのにもかかわらず、それでもツンは毎日海へ足を運んでいた
なんとなく、自分の居場所が感じられないからである
それにしても髪が心配だと、ツンは海岸線を歩き出した
情けなく眉を寄せ目をしかめ、ぶつぶつと愚痴を漏らしながら

37 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:23:24 [ I8.hcAPY ]
ドライヤーのファンの音が、個室に響く
エリュシオンに艦を隠して三日が経過した
現在、状況ががどうなっているのかは、把握してはいない
だがパイロットである私たちに連絡がないということは、目立った動きはないということだ
大方先日の戦闘での損害の処理と、戦力の結集に時間をかけているのだろう、しばらくはまったりと待っていればいい
今私たちは、地下海底の、いわゆる秘密基地に艦や機体を隠し、息を潜めている
もともとジャミングの強力な国家なのだ、無理に隠そうとすることもないだろうと思う
どうせ前回の戦闘への乱入で目をつけられているだろうし、変にこそこそする必要があるのか
それとも他に、何か隠さなくてはならないものがあるのだろうか?
まぁ、そんなこと私の知ったことではない
髪にくしを通すことに、意識を集中させる
さらりとクシを撫で下ろすと、柔らかいウェーブがかかった
こうして簡単にドライヤーをあてるだけで綺麗な癖のつく、自慢の髪
ヘルメットをつけるときかなり邪魔にはなるが、それでも肩に尽く程度には髪の長さを保っていた
でもブーンは、私のような暖色の癖毛より、マナのようなサラサラの黒髪のほうが好みなのだろうか
一瞬染めてみようかという思考が脳裏をよぎったが、即座に否決して溜め息をついた

38 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:23:36 [ I8.hcAPY ]
ξ゚⊿゚)ξ「さて……これからどうしようかしら」
先程までいた浜辺は、この海低基地から地上に出れば、すぐそこにある
だが、とてもではないが今更行く気にはならない
せっかく潮と砂の不快感を洗い流したのだ
シャワーを浴びるのは好きだが、率先して汚れるのは趣味じゃない
それに髪をセットするのは、それなりに骨の折れる作業だからだ
その時、ツンのお腹が小さく名乗りをあげた
壁にかけられた時計を振り返り、そういえばもうお昼ねと独りごちた
基地内の食堂で食事を済ませようかと考えたが、どうも気が進まない
先々日と世話にはなったが、基地という場所柄か男臭く、女に飢えた連中がやたら声をかけてきて、落ち着つくことができないのだ
宇宙連合軍の基地も大方に通った感じだったので仕方がないといえば仕方ないが、だからとそれらを我慢する理由にはならなかった
今日は気分転換に、外で食事をとろうか

39 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:23:55 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「ツン、いるかお?」
扉をノックする音と共に、声が聞こえてきた
それに反応して、ピクリと肩が跳ね上がり、少し動悸が早くなる
ξ゚⊿゚)ξ「な、なにかしら、ブーン?」
( ^ω^)「お昼、一緒に食べないかお?」
お昼、という言葉が耳に入った時点で、ツンはすぐに外出の準備はじめていた
ブーンがやっと私のことを誘ってくれた
ここに来てからこっち、ブーンはマナにつきっきりと言っても過言ではない状態で、ずっと私の相手をしてくれていなかったのである
努めて平静を装うとするも、どうしても顔がほころんでしまう
ξ゚⊿゚)ξ「ち、ちょっと待ってなさい!」
着ていたハーフパンツとシャツを脱ぎ散らかし、どたばたと洗面所へ向って軽く化粧を施す
先程風呂に入っていたことに、僅かながら感謝する
案外海も役に立つなと、自分勝手なことを考えながら

40 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:24:15 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「まーだかおー」
ξ゚⊿゚)ξ「き、急にきたのはそっちでしょ! ちょっとくらい待ちなさいよ!」
催促の声にそう言い返し、クローゼットを開ける
その中から一着可愛らしいワンピースを取り出し、身に着けた
ずいぶんと久しぶりに、粗雑な服からこのような着飾った格好をした気がする
宇宙軍にいたころは、パイロットスーツか制服、もしくはジャージ
男連中はそれで問題はなかっただろうが、個人的には浮ついた格好もしてみたいなとかねてから思っていたのだった
姿鏡で自分を客観視してみたが、なかなかイケている、といった感じではないだろうか
エリュシオンに着いた際に支給された金銭の、大半をつぎ込んだ価値があったというものだ
この格好を見て、ブーンはなんと言ってくれるだろうか
どうせブーンのことだから気の聞いたセリフなど言わないだろうけれど、それでも淡く期待してしまう
一度深く深呼吸して気を落ち着かせ、ドアノブを捻った

41 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:24:33 [ I8.hcAPY ]
ξ゚⊿゚)ξ「待たせたわ……ね」
弾けるような笑顔をたたえていたツンの表情は、しかしすぐに曇ってしまった
ブーンの後ろに、黒髪の女が控えている
マナ「こんにちは、ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「……こんにちは」
柔らかく微笑みを向けられて、ツンは思い切り不機嫌顔になった
何でこの女が一緒なんだ
( ^ω^)「マナちゃんがさ、ツンも誘ってあげようって言ったんだお」
マナ「あ、迷惑でしたら、無理には付き合ってくださらなくてもいいんですけれど……」
二人の言葉にツンは更に表情を曇らせ、まさに苦虫を噛み潰したような顔、を体現する形となった
ついでだったのは、マナではなく私の方か
しかもブーンには、私を誘うという気はなかったということだ

42 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:24:50 [ I8.hcAPY ]
ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ別に、付き合ってあげても……暇だったし」
投げやりな調子で、伏目がちに言う
確かに暇ではあったが、こうしてわざわざ着飾るということは好意の表れということなのだが、当然ブーンは察っせなかった
踵を返し、じゃあ行こうかとブーンはさっさと歩いていってしまった
あまりの素っ気なさに、怒りを通り越して悲しくなってくる
私を守るとか言っていたくせに、もっといいものを見つけたからと、私はお払い箱というわけか
先に歩き出した二人を追って、少し後ろをとぼとぼとついていく
マナ「そういえばツンさん、可愛らしい服を着てますね。とても似合ってますよ」
マナが振り返って言った
しかし、ブーンは振り返らなかった
誉められているのだが、欠片も嬉しくない
むしろ人の良さそうな笑顔が余裕のあらわれに見えて、憎らしく思えた
私がブーンにまるで相手にされていないから、心の中で馬鹿にしているのではないだろうか
着飾ってアピールしても気にもされない、情けない女だと

43 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:25:00 [ I8.hcAPY ]
ξ゚⊿゚)ξ「お世辞なんていらないわ」
そう吐き捨て、敵意を剥き出して睨みつけて鼻を鳴らす
苛々する、ブーンと一緒にいた時間は、私のほうが長いのに
しかしツンは、これまでブーンに対し好意を顕わにしたことは、ほとんどなかった
性格上、そういうことはなかなか出来なかったのである
ブーンはもてないし、近くにいるのは私だけだから、私のことをいつか好きになってくれると、そう根拠もなく思ってもいた
しかし今こうして、ツンの知らない時間を共有していたマナが、ブーンと親しげにしている
嫉妬にかられた女の心に、どす黒く広がっていくものがあった
こんな女、はじめからいなければよかったのに

44 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:25:16 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「やっぱカレーはうまいお、最高だお」
マナ「内藤さん、相変わらずカレー好きですね」
楽しげに会話をする二人を横目に、ツンは黙々とラーメンを啜っていた
あの後ブーンたちと共に外出し、近くにあった公衆食堂に入った
基地や工場の近くということもあってか、作業服を着た人がちらほらといる
速さをモットーにしているのか、注文した食事はすぐに届いた
細く縮れた麺に白く濁ったスープ、豚の骨のだしをとっているのだと、この食堂の店主が言っていた
しかし二人の会話に聞き耳を立てるのに全神経を集中しているため、味わう余裕はなかった
隣で展開される会話に混ざりたくはあったが、それは難しかった
二人の世界を形成し、割り込もうにもタイミングがつかめない
心なしか、ブーンが自分と会話している時よりも楽しそうだ
最近自分がブーンと話したことといえば、MSの話
ブーンが"ファンネル"は自分にも使えるだろうかと話し掛けてきたのだが、自機の整備中だったので一言二言話した後、適当にあしらった
最近はずっと、ブーンとはギクシャクしていた
あれもこれもそれもどれも、全ての原因はマナとかいう女のせいだ
よくよく考えればこの女は、ブーンをたぶらかして地球軍に留めて私たちと戦わせ、挙句ブーンを死の淵に追いやった
そして少し前に、何事もなかったようにブーンに近づき、またこうして言い寄っている
ブーンもブーンだ、何故こんな奴と親しくするのだろう

45 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:25:38 [ I8.hcAPY ]
ξ゚⊿゚)ξ「ごちそうさま」
まだ半分以上残っていたが、今の心境を反映してか食欲も減退している
視界の端で、シェフがあんぐりとこちらを見ていた
悪いとは思ったが、どうせ味などしないのなら食べるだけ無駄だ
( ^ω^)「ツン、もういいのかお? この後デザートにパフェを頼んであるお」
ξ゚⊿゚)ξ「いらない」
吐き捨てるように言って、食器を手に席を立つ
ふと、二人の前に並んでいた食器が目に入った
普段のブーンは、何かに急かされているのかと思えるほど食べるのがとても早かった
それなのに今は、普段なら食べきっているはずが半分程の残っている
マナの食器を見て、合点がいった
ブーンはマナに合わせてやっているのだ
私と食事をした時は、さっさと食べ終えるくせに
ブーンが気の利かない男がからこそ、細かい気遣いをマナに対してしているということが腹立たしかった
ブーンはツンの返答が意想外だったのか、困惑していた

46 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:26:38 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「ツン、どうしたんだお? 甘いもの好きだったはずだお」
ξ゚⊿゚)ξ「いらないって言ってるでしょ! 聞こえなかったの!?」
( ^ω^)「つ、ツン……?」
愕然とした表情で、ブーンがこちらを見上げる
大声を出してしまったことで、食堂の客の目線が集まった
マナ「ツンさん、どうしたんですか? 落ち着いてください……」
心配げな表情でマナが言った
気に入らないのだ、この女の一挙一動が
ξ゚⊿゚)ξ「うるさいわよ! なによ、アンタなんか敵だったくせに!」
一方的な非難の言葉をぶつけると、マナが顔を俯けた
それを見てブーンが眉間に皺を寄せ、腕を掴んできた
相当怒っているらしく、握られた腕が痛い

47 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/03(土) 23:27:02 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「ツン、いいかげんにするお! なんなんだお、さっきから!」
ξ゚⊿゚)ξ「私に触らないでよ!」
怒鳴り、腕を振り払った
その拍子でラーメンの器を載せたトレイが手から滑り落ち、床に落下した
器は音と破片を撒き散らし、食堂の空気を凍らせた
衝動的な行為に対する後悔や羞恥でいたたまれなくなる
ツンは逃げるようにして、その場を走り去った
一体何をやっているのだろうか、私は
あんな態度で、あんなことを言って、怒らせてしまうのも当然だ
自分はどうしても感情的になってしまうきらいがある
ずっと昔からわかっていたことだったが、やはり今も改善には至っていない
店を出てしばらく走った、前方に海が広がっている
振り返って後ろを見てみる、しかし誰も追ってきてはいなかった
やはりブーンは、私のことなどどうでもよくなったのだろう
そもそも、私とブーンは付き合っているというわけでもなかったのだ
どうでもよくなった以前に、はじめからどうでもいい存在だったのだ
居場所がない
顔を俯けて、歯を食いしばった
足許にぽつぽつと、いくつかの小さな水滴が落ちていく
これまでに感じたことのないような無気力感を感じながら、ツンは袖で目を拭った
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【2006/06/06 20:01 】 | ( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです | comment(0) | trackback()

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