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【2024/04/20 11:14 】 |

( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです part22
104 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:08:55 [ 0wsA7BlM ]
( ^ω^)「ツン、そういえば可愛い服着てるお。凄く似合ってるお」
ξ゚⊿゚)ξ「……言うのが遅すぎるのよ、馬鹿ブーン」

モニターの中で、ツンとブーンが笑っている
立派な出歯亀行為だったが、まぁ気付かれないのなら問題ないだろう
前回の戦闘以、険悪な関係になっていた二人だった
どうやら、マナという地球連合軍の兵がうまく仲を取り持ってくれたらしい
個人的にはどうでもよいことだが、それによって戦力の向上に繋がるのなら一向に構わない
まったく暢気なものだ
ヱアは小さく溜め息をつくとシートにもたれかかり、目を伏せた

105 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:09:41 [ 0wsA7BlM ]
ネルガル「やっぱり行かないほうがいい方がいいと思う。せめて、ついていけたらいいんだけど」

空港の一角に、周囲と同じように見送りにきている家族があった
しかし彼等は一様に沈んだ表情をしており、家族の旅立ちを歓迎はしていないようだった
沈黙の破ったのは、そろそろ中年に差しかかろうかという、優しげな顔立ちをした男だった

ヱレ「大丈夫ですよ。国司を殺すようなこと、しないでしょう」

言葉を向けられた女性は、ダダをこねる子供を見るように苦笑した
それでも諦めきれず、ネルガルは食い下がった

ネルガル「でもやっぱり、君が行くことないと思う。だれか他の人を……」
エレ「どうせ、いつか誰かが言わなければならなかったことです。なら、私が行きたいのです」
ネルガル「ヱレ……」

妻の言葉と瞳に、ネルガルは強い意志を感じ、口をつぐんだ
ヱレは膝を曲げると、立ち尽くしているネルガルの隣にいる双子の少年と少女を、そっと抱きしめた

ヱレ「すぐに帰ってくるから、心配しないで。いい子で待っててね」

微笑みを向けられ、少女はうん、と首を縦に振った
少年は感極まってしまったのか、歯を食いしばり、うっうっと泣き出してしまう

106 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:12:31 [ 0wsA7BlM ]
エレ「大丈夫だから、ね? 帰ってきたらまた、一緒にお散歩に行きましょう?」

ヱレが困り顔でそう言うも、少年は首を横に振る
ネルガルの落ち着きのなさや、ヱレの顔に漂うかすかな悲哀から、ヱアはただ事ではないと子供ながらに感づいていた
地球連合の代表に中立国家の国司として、ヱレは物申しに行くのだ
年々緊張化が進んでいく地球民と宇宙民の関係、無言の圧力、秘密裏に、かつ着実に増強される軍事力
事態の悪化を懸念したエリュシオンは、地球総連議長ヴィネの元へと国司を派遣し、会談の場を設ける手筈となっていた
国司とはすなわち彼女、ヱレ
ネルガルの妻であり、そして双子の親でもある

ヱア「だって、母さん……! ちゃんと……本当に、帰ってくるの……?」

優しく微笑むエレに、、ヱアが嗚咽を堪えながら言葉を吐き出す
後から後から溢れ出してくるヱアの涙を、ヱレは人差し指でそっと拭ってやった
ヱアの隣で難しい顔をしていたヱイルも、ヱアの悲しみにあてられ、顔を俯けた

ヱレ「大丈夫、約束するわ。……そうだ、これ、あなたが持っていて」

そう言ってヱレはヱアの手を取ると、エレはその上に銀色の輪を落とし、そっと握らせた

ヱレ「お父さんに貰ったものなの。私が帰ってきたら、返してね?」

突然指輪などを渡され、ヱアは呆けた顔で自分の手とヱレの顔を交互に見比べた
自分の大切にしているものを残していくということがどういうことか、ヱアにはよくわからなかった
ヱアが指輪をに意識をやっているうちに、ヱレはヱイルに顔を向けた

107 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:13:04 [ 0wsA7BlM ]
ヱレ「ヱイル、ヱアのこと、お願いね?」
ヱイル「うん……。必ず、帰ってきてね……」
ヱレ「ええ」

こくりと頷き、ヱレはすっと立ち上がった
ネルガルを振り返り、ふっと微笑みかけ、口を開いく

ヱレ「では、そろそろ行きますね」

しかしネルガルはヱレと目を合わせることをせず、強く拳を握っていた
そして思いつめたように伏せていた顔を上げると、決然と言う

ネルガル「やっぱりダメだ、こんな。会談は中止しよう。危険が大きすぎる」

言うと、エレは少し眉を寄せた
そう、危険が大きすぎるのだ
元々この会談を提案したのはヱレであり、ネルガルの本意ではなかった
中立という立場ゆえ、せめての戦力を溜め込んでいるエリュシオンだ
隠蔽に気を払ってはいるが、それも完全には隠しきれてはおらず、何かと昔から目をつけられていた
会談を受けたのも、推測ではあるが、おそらくは誘い込むためだろう
行って余計なことを言えばば殺される、口を出すなと見せしめにされるのは明白だ
それはヱレだってわかっているはずなのに

108 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:14:46 [ 0wsA7BlM ]
ネルガル「僕達は中立の国家だ。勝手に始めようとしてる戦争なんか放っておけばいい! 僕たちには関係ない!」

そう、搾り出すように叫ぶ
関係ないのだ
どうせ蚊帳の外の戦争、おそらく巻き込まれることもないだろう
十中八九、地球連合の大勝で戦争は結末を迎えるだろうから
放っておけばいいんだ、そんなものは
わざわざ危険を冒してまで、止めようなんて馬鹿げている

ヱレ「そういうわけにはいかないでしょう」

しかしヱレはネルガルを真っ向から見据え、言った

ヱレ「中立とは、ただ黙ってみているだけが許されるという立場ではありません。何も言わないのは、黙認と同じ事。間違っていることは、言及しなければいけません。止めてください、と」
ネルガル「でも、それじゃあ、君が……!」
ヱレ「私のことはいいのです。それより大切なのは、平和を訴えること。戦争を望まない力ない人間の、代弁をしなくては」

私たちこそが、とヱレは言葉を続け、再びふっと笑んだ
口調も立ち振る舞いも柔和な彼女は、しかし自分の意見だけは、こうと決めたら頑として譲らない
そうと知っているから、ネルガルはぐっと唇を噛んだ

ヱレ「大丈夫ですよ。言葉は伝えるためにあるのですから。だから、きっと上手く、平和なままでいられるはずです」

それが、彼女の最後の言葉となった

109 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:19:43 [ 0wsA7BlM ]
母は、飛行機事故で死んだことになっている
当然連中が殺したのだ、波風を立てないように申し訳程度の隠蔽工作をして
母が死んだと聞いて、俺は何を感じ、どうなったのか、よく覚えてはいない
ただ憎悪があり、殺意があった
何故と、何故平和を願って殺されなければらないのだと、そう思った
そして今も、これからも感情は変わらない
だが母は、平和を望んでいたのだ

110 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:21:59 [ 0wsA7BlM ]
ヱイル「……ア、エア! どうした、大丈夫か?」
エア「……姉さん……?」

不意に暗闇から姉の声が聞こえてきて、目を開けるとハッチの上にヱイルが佇んでいた
そうか、僕はいつのまにか眠ってしまっていたらしい

ヱイル「うなされていたぞ。本当に大丈夫か?」

覗き込むようにしてこちらの様子を伺うと、ヱイルは狭苦しいコックピットの中にずかずかと入ってきた
パイロットシートに張り付いていた体を起こそうとすると、額に手を当てて止められる
熱でまいっているとでも勘違いしているのだろう、心配性な姉だ
大丈夫だよ、となるべく優しげな声を出す
それで安心したのか、ヱイルは心配げな表情をしながらも、手を引いた

ヱイル「まったく、余計な心配をさせないでくれ」
ヱア「ごめんね。ちょっと、昔のことを思い出しちゃって」
ヱイル「昔のこと?」
エア「母さんのことだよ」

言うと少し、ヱイルの顔が引きつった

111 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:22:46 [ 0wsA7BlM ]
ヱイル「……そうか」

普段は気丈なヱイルらしくない、翳りのある複雑な表情を見せる
元来、彼女はそれほど強い人間ではないのだ
ただ母から僕のことを任されたから、こうして口調まで変えて演技をしている
どこか母の面影の残るその悲しげな顔に、いたわるようにそっと手を伸ばす
ヱイルは目を細ると、僕の手を握った

ヱイル「大丈夫だ、私は……。それより、エアは大丈夫なのか、本当に?」
エア「僕は大丈夫だよ。……むしろ、いい気分だ」
ヱイル「エア……?」

ヱイルがこちらに訝しむような視線を、こちらに向けている
僕はいつのまにか、普段彼女の前ではしないような表情をしていたらしい

エア「いや、もうすぐ戦争が終ると思うと、嬉しくてさ」

慌てて自身で助け舟を出す
それでヱイルは納得したのか、そうか、と言って普段の仏頂面に戻った
気分がいい、本当のことだ
次こそきっと、この"パニッシュ"を存分に操ることが出来るだろう
その一瞬のためだけに、今までを生きてきたようなものだ
気分よくならない方がおかしいだろう

112 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:23:34 [ 0wsA7BlM ]
エア「……あのさ、姉さん」

言いながら、自分の左手を広げ、見つめる
一本だけ不恰好に細くなった指がある
あの日あの時母に貰った指輪を、母がしていた指と同じ指にずっとはめ続けていたのだ
その細い薬指はめられたそれを、宝物を扱うようにそっと取り外す

エア「これ、姉さんが持っててよ」

手のひらに乗せて差し出すと、モニターの光を受けて指輪はきらりと光った
ヱイルは困ったような表情をしている
どう反応していいのか、わからないでいるのだろう

エア「MSを操縦する時、危ないんだ」

適当に嘘を並べる
MSに乗る時はそもそもパイロットスーツなので、指輪程度で危険にはならない
嘘をついてでも、この指輪はヱイルに持っていて欲しかったのだ
いや、そうではない、自分でが持っていてはよくないからだ
当のヱイルは、こくりと頷いていた

ヱイル「そうか。ならば、私が預かっておこう」

ありがとうと言い、差し出された手の上に銀色の輪を落とし、そっと握らせた
いままであって当然だった位置から指輪が失われ、なんとなしに落ち着かない気分になる

113 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:24:26 [ 0wsA7BlM ]
エア「姉さん……」
ヱイル「なんだ?」

ヱイルが指輪を手の上で弄りながら、こちらに顔を向けた
平和を願って死んでいってしまった母の指輪
自分に持つ資格が、果たして戦後に残っているだろうか
それよりも、それ以前に……
なればヱイルに、きっと綺麗なままでいるだろうヱイルに持っていて欲しい

エア「その指輪、汚さないようにね」

そう微笑みながら言うと、ヱイルはさも当然といったように頷き、無論だ、と指輪を握り締めた

114 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:25:54 [ 0wsA7BlM ]
暗い部屋の中、ヴィネはベッドに腰をかけ、一人すすり泣いていた
胸に硬く一枚の写真を抱いて、唇を噛み締めている

ヴィネ「ショボン、私……」

幾度となく悲しみの波が押し寄せてきて、涙は先程から留まるところを知らない
目を閉じれば嫌でも思い出す、あの光の柱
多くの人を飲みこんで死に追いやり、ショボンを殺した悪魔の所業
あまりに理不尽すぎる暴力
奴らは人間じゃない、悪魔だ
何故、あんなことが平然と出来るのだ
悲しみと怒りが入り交ざり混沌として、ヴィネは炸裂しそうになる感情を歯を食いしばって必死に抑えた

SP「ヴィネ様、時間です。こちらへ」

不意の声に顔を上げると、いつのまにかSPが部屋に入ってきていた
慌てて袖で涙を拭う
しかしSPは私の挙動などには全く興味がないのか、何故と尋ねることすらしなかった
もっとも強い黒のサングラスをしていたので、何を考えているのかは推し量れなかったが
SPは淡々と言葉を続ける

115 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:27:04 [ 0wsA7BlM ]
SP「暗唱に問題はないですか」
ヴィネ「はい……問題ないです」
SP「では、早急に化粧を。その姿は人々の前に立つには相応しくない」
ヴィネ「すみません……」

SPの言葉には、一片の感情も含まれてはいなかった
あくまで事務的な、機械を相手にするような話し方だ
所詮私は父の人形、それも当然といえば当然か
いや、人形でも持ち主からの愛を受けることは出来る
ならば私はさしずめ、手段として存在する選択肢の一つでしかない

SP「ではこちらへ。時間は余りありませんゆえ、急いで下さい」

それだけ言うと、SPは部屋から出るように促し、先に出て行ってしまった
その後ろを、付き従うようにして歩く

116 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:27:40 [ 0wsA7BlM ]
SP「オットフリート様は、次回の戦闘で全てに決着を受けることを望んでいます。あなたのミスで士気に影響を及ばせぬよう、頼みますよ」
ヴィネ「はい、わかっています……」
SP「では、私はこれで」

SPはすっと小さく会釈をすると、面倒がやっと片付いたとでもいうように溜め息をつき、議会堂の方へと消えていった

侍女「では議長、こちらへお願いします。化粧の手配が出来ております」
ヴィネ「わかりました……」

議長である私、マリオネットである私、オットフリートの娘である私
ただそれらは役割と、立場でしかない
ショボンが死んだ瞬間に、ヴィネという人間もまた、生きる場所を失ってしまったのだ
ならばせめて、一矢報いたい
私とショボンを殺した敵に、復讐を
敵に同じ苦しみを、悲しみを、死を与えてやるのだ
怨敵が滅び行く瞬間を夢想して、ヴィネはくつくつと口元を歪めた
とうに先程までの泣き顔はなく、恰幅のいい侍女に連れられて、ヴィネは狂乱の宴の火付け役を遂行するための準備に向った

117 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:29:27 [ 0wsA7BlM ]
ヴィネ「先の戦闘で、我々は多くのかけがえのない命を失いました。何故、こんなことを平然と出来るのでしょうか!? 我々はただ平穏に暮らし、日々を幸せにすごしたいだけだというのに! それなにの彼らは兵器を作り上げ、我々を滅ぼさんとしています!」

ヴィネは四方を人に囲まれるようにして壇上に立ち、言葉を紡いでいた
周囲は静寂に包まれ、深い怒りとヴィネに対する賛同の感が漂っている
先に攻撃を仕掛けたのはこちらだという事実を、既に彼らは失念していた
ヴィネは先を続けた

ヴィネ「彼らの侵略を、これ以上許してはなりません! 我々の生きる権利を、彼らに理不尽に奪われるいわれなどないのですから! 我々は勝ち取らなければなりません! 平和を、幸せを、世界を! 敵から!」

そうだ! という同調の声が、諸所から聞こえてくる
だが公明正大な戦争など、ありえないのだ
敵にも奪う権利はない、なれば当然自分たちにも奪う権利などないのだ
悪と正義の二項対立
わかりやすく単純で、全てを正当化できる唯一の論理
ヴィネは気付かない、気付けない

118 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:30:11 [ 0wsA7BlM ]
ヴィネ「悲しみと怒りの怒号が奏でる暗澹たるこの世界に、再び平和の歌が響かんことを、私は心から祈っています」

話が区切りをみて、ヴィネは一歩壇上から下がった
すると弾かれたように皆が立ち上がり、歓声が巻き起こした
不思議な心地よさを、ヴィネは感じた
多人数による狂気的な連帯感、敵に対する憎悪と殺意で結ばれた共同思念体
抑えがたい高揚に、ヴィネは体をうち奮るわせた
そう、勝ち取らねばならないのだ、平和を、幸せを
SPに連れられて、ヴィネは控え席へと戻って行った

オットフリート「上出来だ。後は行政府で待っていろ」

VIP席に戻ると、こちらに顔を向けずにオットフリートが言った
そのすぐ傍で、余命いくばくもないような老人たちが、着飾った格好で下卑た笑い声を上げている
残存した宇宙民をどうするだとか、人間市場でもしようか、事後処理の省を作って予算を割こうか、など
その他は大方、戦後の利権話でもしているのだろう、私にはよくわからない話だ
その時、背後からドスの聞いた声が拡声器に乗って聞こえてきた
おそらく何処かの部隊の隊長なのだろう、兵を鼓舞するような内容の話をしている

119 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:33:05 [ 0wsA7BlM ]
オットフリート「私は行くぞ」

オットフリートは最後まで話を聞く気などないのか、席を立って、議会堂の出口へと向っていった
行政府で待っていろ
それが私の次の仕事、役目だ
ヴィネは手を握り締め、オットフリートに追いすがり、言った

ヴィネ「父上……。次の戦闘、どうか私も連れて行ってください」

オットフリートは振り返らず、その場で立ち止まった
その後姿に威圧を感じて、ヴィネは少したじろいだ
だが、ここで引き下がるわけにはいかない
ヴィネが二の句を継がないので、オットフリートは仕方なしといったふうに口を開いた

オットフリート「何故だ」

なんど聞いても慣れない声だと、ヴィネは感じた
幼いころから聞き続けている声なのに、今でもこの声を聞くと緊張してしまう
これが厳格な父に対しての感情なのか、それとも操り主に対する敬意からなのか、それとも
ヴィネには、どちらかわからなかった

120 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/07/09(日) 14:34:06 [ 0wsA7BlM ]
ヴィネ「わ、私も、私たちが勝利する瞬間を、この目で見たいのです」

おずおずと、それでも力強くヴィネは言った
味方が敵を砕く瞬間を、焼き払う瞬間を、少しでも多く目に焼き付けたい
そうしないと、ショボンも私も報われないから
落ち着かない空気に、ヴィネは綺麗な赤いスーツのすそをきゅっと握り締めた

オットフリート「……好きに、するがいい」

オットフリートは小さく溜め息をつくと、そのまま出て行ってしまった
その言葉に、ヴィネはぱっと顔を上げる

ヴィネ「あ、ありがとうございます……!」

既に閉じてしまっている扉に、ヴィネは言った
父が許可をくれたことが、ヴィネにとって何より嬉しかった

ヴィネ「ショボン、戦争が終ったら私も……」

ヴィネは胸に手をやると、そっとポケットから一枚の写真を取り出した
時の止まった空間の中には、ショボンの笑顔が閉じ込められている
次元の違う世界
手は届かず、胸が詰まる
全てが終ったら、器を捨てて、私もあなたのところへ逝くよ
だから、そのときはまた、いつもみたいに笑顔でいてね
ヴィネは写真を胸に抱き、誰にも気付かれないようにしまってから、自分の席に戻った
今度こそ、全てを終らせるために
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【2006/07/13 22:36 】 | ( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです | comment(0) | trackback()

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