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【2024/03/29 03:50 】 |

( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです part20
50 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 22:43:28 [ I8.hcAPY ]
ツンが走り去って、ブーンと二人、食堂に取り残されてしまった
こちらのことを、食堂にいる人間ほぼ全てがちらちらと見ている
居心地の悪さを感じ、思わず目を伏せる
慌ててすぐに食器を破壊してしまったことをブーンが店長に謝罪し、食事代に弁償費を上乗せして会計を済ませた
心なしか店長が気を落とした様子だったのが気になった
その後すぐにツンを追って外へ出たものの、すでに彼女の姿は見えなくなっていた
仕方がないと、二人で並んで基地へと戻ることにした

( ^ω^)「ごめんおマナちゃん。ツンが、あんなこと……」

申し訳なさそうにブーンが言う
彼が謝るのは筋違いなも気もしたが、おそらく彼女の尻拭いは習慣なのだろう
気にしていないと伝えると、彼はもう一度頭を下げた

51 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 22:46:52 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「ここ最近、ツンの様子がおかしいんだお……」

話し掛けても素っ気ない返事しかしてくれない、と内藤がぼやいた
言われなくても、彼女が不機嫌なのは一見したら誰でも感づくだろう
私の記憶では、彼女が最後に機嫌よさそうにしていたのは、私が先日の戦闘で彼女と通信をする直前までだった
そのことからも、おおよその見当がつく
彼女は、私がブーンと一緒にいて、親しくしているのが気に入らないのだろう
たしかに彼のことを好いてはいる、これからも仲良していきたいとも思っている
だが違う、それは友情であって、彼女が考えるそれではないのだ
いくら親密になっても、手を重ねても、心は真に通いはしない
彼が兄の仇という事実は、どうしようもなく変わらない現実だからだ
心の壁がどれだけ薄く透明になっても、なくなりはしない
それにしても、たった三日で彼女がブーンに好意を寄せているであろう事は、簡単にわかってしまった
以前ツンたちがいたという軍学校や軍艦の周囲の人たちは、彼女らに相当気を使っていただろうと思う
現場の様子を想像して少し笑いそうになったが、たしかにこれは厄介なことだ
困った表情をしたブーンの横顔を見つめながら、どうしたものかと首を捻った

52 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 22:50:51 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「マナちゃん」

不意に呼びかけられて、どうしましたと言いながら振り返った
ブーンは、浜辺の近くにあったベンチを指さしていた

( ^ω^)「海、見ていかないかお?」

何故唐突に、と首を捻って、はたと気付いた
どうやらブーンは、私が海を好んでいたことを覚えていてくれたらしい
先程嫌な思いにさせてしまったからお返しに、ということなのだろう、本当にいい人だ

マナ「いえ……今は遠慮しておきます」

気を悪くさせないようにと、微笑みを浮かべながら言う
たしかに海は好きだ、単純にそれ自体を愛している
だが、あの時海を見ていたかったのは、広大すぎる海を見ることで、一時でも目を逸らしたかったからだ
ブーンのことや、これからのことで悩む自分の心の内から
しかし今は、自分の出来ること、やるべきことが理解できている
あの時もやのかかっていた進むべき道が、今ははっきりと見えている
だから今は、海は必要ない
ブーンはマナの言葉を聞いて、意外そうに少し眉を上げた

53 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 22:54:57 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「そっかお……。じゃあ、また今度一緒に見ようお」
マナ「はい、是非。では、また後ほど……」

ぺこりと頭を下げて、マナは走り出した
私が彼とツンの間を取り持ってあげよう
ブーンは仇、それはわかっている
だが彼は同時にマナが抱いていた反戦の感情を、具体的に現せる場所へと導いてくれた存在でもあるのだ
彼は、憎まれる辛さも悲しみも虚しさも、きっと誰よりも強く感じていた人間だ
だからこそ皆を止めたいと、自らの命を白刃の下に晒して戦っている
彼は、幸せになるべき人間だ
そしてできれば傍で、彼の笑顔を見ていたい
心地よい風の中、煌く海に目を向けて、マナは心が満ち足りていくのを感じた

54 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 22:58:38 [ I8.hcAPY ]
駆けていくマナの背中を眺めながら、ブーンは呆然と立ち尽くしてしまった
ツンには理不尽に怒りを向けられ、更にはマナにも置いてけぼりにされてしまった
空を振り仰ぐと、まだ青く、強い陽光が目に飛び込もうとするのを、手を掲げて防いだ
脱力するように首を垂らし、これからどうしようかと溜め息をつく
すると、お腹の虫がが小さく鳴った
ツンが騒ぎを起こしてしまったため、あの後すぐに食堂を出るはめになってしまい、結局半分ほどしか手をつけていない
ああ、あのカレー、"イシューリエル"程ではなかったものの、美味しかったのに
悔やんでも仕方がないので、別の場所で軽食でもとるべく街の方に向けて歩き出した
それにしても、マナが海を見ることを拒否するとは思わなかった
いつか、一日中海を見続けていたことがあった
あの時自分は考え事ばかりで、海ではなく自分の内ばかりを見つめていたが
歩みを止め、振り返り、再び海を見つめてみる
戦争のこと、ドクのこと、ツンのこと
そして、これからのこと
考え事ばかりしているのは、どうやら今も変わってはいないようだ
最近自分は、どうも難しいことばかりを考えている気がする
しょうのないことだが、なんだか自分らしくない気もして、成長したと喜べばいいのか、複雑な気持ちになる

55 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:07:17 [ I8.hcAPY ]
CIC「いいねぇ、青春だねぇ。若いっていいねぇ、本当にいいなぁ」

やはり一人で海を見ていようかと踵を返しかけたところで、突然後ろから声をかけられた
振り返ると、街の方からCICのお姉さんが歩いてきていた
大方、管制という役柄、暇を持て余しているのだろう
管制では整備の役に立たないからだ
でなければ、一人で街の散策などしないだろう

CIC「でーも、フラれちゃったのかな?」

CICは、微動だにすれば体か触れ合いそうになる程こちらに接近し、覗き込むように上目使いで言った
先程のやり取りを見ていたのか、妙に顔をほころばせている
この人のことだから、つけていたという可能性もなかにしもあらずだ
以前艦長をつけて、色々とゆすっていたらしいという噂もある
後ずさるように離れ、いつから見ていたのかと問うと、食堂からだよ、よく気付いたねと少し驚いた様子だった
聞くところによれば、ショボン艦長に食事に誘われて、あの場に偶然居合わせていたらしい

CIC「前から思ってたけど、やっぱ君らラブラブだよね。ここに来る前も仲良かったし、いちゃいちゃしてたし。ああ憎たらしい」

爽やかな笑みを浮かべている
言動と表情が一致していないので、本心からの言葉なのか理解しがたく、こういう人はどうも苦手だった

56 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:12:05 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「マナちゃんは、僕のこと好きなんかじゃないですお」

自嘲気味にそう言うと、何でそんなこと思うの、とCICが不思議そうに首をかしげた
またもやずかずかと距離を詰めてきたので、再び後ずさるようにして離れる
他意があるのかないのか、あまり女性慣れしていないので、止めて欲しいものだ

( ^ω^)「マナちゃんとは、何もないですお」

彼女のことを、たしかに好いてはいる
これが愛情なのか友情なのか、それとも仲間としての連帯感なのかは定かではないが、たしかに好意は存在する
マナも、好意的に僕を受け入れてくれていると思う
だがしかし、彼女にとって僕は友人云々であると同時に、仇でもあるのだ
その事実が、互いの密接を拒んでいる
手を伸ばしても体温は伝わらない
これからどれだけ親密になっても、壁はなくなりはしないだろう
彼女の兄を殺したのは、故意だったわけではない
戦争のシステム上仕方のないことでもあった
だが彼女の兄という存在を奪ってしまったのに、仕方がなかったでは済まされないのだ
それなのにマナは割り切って、僕と再び共に行動を共にしている
本当にマナという女性は強い人だと、改めて感じた
そして、戦争はやはり、辛いことが多すぎる

57 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:17:06 [ I8.hcAPY ]
CIC「じゃー、内藤君はツンちゃん狙いかい? 仲間だったんでしょ、宇宙連合の?」

人がシリアスに浸っているというのに、あっけらかんとした表情で学生のような話をする
わざとなのだろうかと勘繰る
この人の笑みには、常日頃から含みがあるように感じられるので、真意は測りかねた

マナ「あー、でも、ヱイルちゃんとの濡れ場見られちゃってるし、気まずいんでない?」

その言葉に、思わず盛大に噴き出した

( ^ω^)「な、何で知ってるんですかお!? ってか、別に僕は何もしてないですお!」
CIC「まーたまたぁ。にくいねぇ、この色男! 色魔!」
( ^ω^)「し、色魔って……」

肘でブーンを小突きながら、CICはニヤニヤと笑う
まさか自律機動偵察機でも展開しているのではないだろうかと、一瞬本気で考えてしまった
まぁ、どうせ大方ヱイル本人に色々と聞き出したのだろう、あまり深くは気にしない
これ以上相手にするのは時間の浪費だと気付いたので、踵を返して基地へと向ことにする
戦闘に備えて、"ストレイヤー"の整備でもしよう

58 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:23:38 [ I8.hcAPY ]
CIC「ところでさぁ、どう? 次の戦闘、勝てそう?」

よほど暇らしいのか、CICはこちらにへばりついて、話を続けようとした
少し足を速めてみても、まとわりつく犬のようにとことことついてくる
寧ろさっさと話を切り上げたほうが、絡まれずにいいかもしれないと判断し、立ち止まる
というか、と先程CICが言った言葉を脳内で反芻する
僕達の望みは勝つことではない、戦争自体をノーゲームにすることだ
振り返ってそう言うと、CICはわかってるよと、投げやりに鼻をならした
わかっているのかわかっていないのかがわからない
大体、殺し合いを止めに行くのに、暴力で無理に言い聞かせようとしては意味がない
けんかを止めるために、当事者間に殴りこむようなものだ
それでは説得力の欠片もない、本末転倒である
本来ならば、MSに搭乗することすらも憚れるところだ
だが、それは仕方がないだろう
意見を発しても、立場が対等でなければ耳を傾けてはもらえない
アリが象に何を言っても、無視されるか踏み潰されるのがおちだ

59 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:33:52 [ I8.hcAPY ]
CIC「でもさぁ、内藤君って強いんでしょ? 一騎当千って感じでしょ? なんかこう、無双的な」
( ^ω^)「いえ、そんなこと……」
CIC「ところで、聞いた話によると君の乗ってる機体は、その辺の量産機じゃ相手にならないくらい強いって聞いたよ。もしかしたら、私が乗っても強いんじゃないかなぁ?」

誉められているのかと思ったら、こちらを侮るような口調でCICが言った
いまさら操縦技術で、管制担当の人間と張り合うおうなどとは思わない
だが、いろいろとこの人物には借りがある、以前強請られたし
こてんぱんにのしてやったら、少しはすっきりするかもしれない
なら、トレーニングルームへ行きましょうかと提案する

CIC「ダメだよ。シミュレーションじゃ臨場感がないもん。やっぱり実機に乗んないとねぇ」

うんうんと、首を縦に振りながら言う
ああ、そういうことか、と眉をひそめる
とどのつまり、彼女はMSに乗りたいだけなのだ
そんなのいわけないじゃないですか、と苦い顔をして溜め息をつく
するとCICは嫌な笑みを浮かべて、こう言った

CIC「私に逆らうのかい? どうなっても知らないよ?」

どすのきいたその声に、背筋を冷たいものがはっていった
いや、今更この人に何が出来るというのだ、何もやましいことなどしなければいいのだ
そう、断ればいい、無理です、と一言言えばいいのだ

CIC「無断出撃未遂。あーんど被撃墜。ああ、少しくらい借りを返しても、いいと思うんだけどなぁ」

ブーンとCICは、二人並んで"ストレイヤー"のあるドッグへと向った

60 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:41:01 [ I8.hcAPY ]
"ストレイヤー"のコックピットの中、パイロットシートにCICを座らせる
ブーンは後ろから落ち着かない様子で計器を弄る彼女を見ていた
決してこちらの迷惑になるようなことをしないこと
そう整備士長に許可を貰い、"ストレイヤー"をドッグから山岳地帯に構えられた軍用地へと運んだ
まさか許可など下りるはずがないだろうとふんでいたのだが、ありがた迷惑な誤算だった

( ^ω^)「あの、わかりますかお? ブースターはそこのペダルで……」
CIC「知ってるさぁ。ちょっと黙ってておくれ」

せっかく教えてあげようとしているのに、と、けんもほろろなCICに頬を膨らませる
CICはというと鼻歌混じりに、モニターに目をやっている
ああ、やはりやめておくべきだったのかもしれない
本当に大丈夫なのだろうかと、今更になって後悔が襲ってきた
どうも嫌な感じがする
もとい、この人といるとろくなことがないのだ
きっと最終的には、彼女の言うことを聞いた自分の浅はかさを後悔するような気がする

61 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:43:25 [ I8.hcAPY ]
CIC「じゃあ、ちょっと動かしてみますかね。つかまっててよー」

気をつけてください、と言いかけたところで、機体が急上昇した
さっそくだ、まったくろくなことがない、舌を思い切りかんでしまった
口を抑えて悶絶していると、下方に海が見えていることに、はたと気付いた
どうやら上昇を続けているらしい

( ^ω^)「なにしてるんですか!? ジャミング域からでちゃいますお!」
CIC「え、いや、あ……あぁ、そっか、ふうん、へぇ。これを踏んでる間は、ずっと加速するのね」

知ってるんじゃなかったのかアンタ、と張り倒したくなったが、まずは現状の緊急回避を優先すべきだと判断する
体を乗り出してレバーを引き、ペダルを踏みなおして制動をかけ、"ストレイヤー"を降下させる
緩やかに機体が落下しはじめたのを確認して、ほっと溜め息をつき、脱力した

( ^ω^)「まったく……。着地の際には、逆制動をかけて衝撃を殺してくださいお。ちゃんとできないと、舌をかみますお」

アドバイスを一応は聞く気になったのか、CICは頷いて答えた
おそらく失敗するだろうと考え、体制を低く構えてシートにしがみついた
重力の影響下にあるこの地球で、着地を上手くこなすことは素人にはなかなか難しいことだ
操縦に慣れた今となっては造作ないことだが、訓練生時代には酷く苦労したことを覚えている
やけにドクの操縦が卓越していて、むきになって徹夜で特訓したものだ
などと、思い出にふけっていると、小さく衝撃が走った
前部モニターに目をやると、完全に景色は固定されている

62 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:46:49 [ I8.hcAPY ]
CIC「ん、着地成功、であります」

さも満足といったふうに、CICはおどけて軍式の敬礼をした
何かのアニメのキャラの真似をしているのだろうか
それよりもまったく、いったいぜんたいこれはどういうことだ
何故、彼女がこうも簡単に着地をこなせる?
口元を歪めて鼻歌を再開したCICに、訝しみをこめた視線を送る

( ^ω^)「どっかで練習でもしてたんですかお?」

CICはこちらに顔を向けると、ふふんと自慢げに言った

CIC「まぁねん。もともと私、MAとかに乗ってどかどか活躍するのが夢だったんさ」

なので、勤務時間外やオフ、仕事をフケて出来た時間を使って、こそこそと練習に励んでいたらしい
そういえば"アブソリュート"のシミュレーター使用履歴が、使った覚えが無いのに更新されていたことがあったことを思い出した
けなげに練習する姿は微笑ましく、賞賛に値するものだが、せめて自分の仕事を片付けてからにして欲しい
皆そう思っているはずなのに、割と嫌われないのは、この人の性格と愛嬌のおかげなのだろうか
ショボン艦長も、皆を先導してついてきてくれたのはコイツだった、と言っていた
案外、いい人なのかもしれない
それでも日頃の行いを鑑みると、とても挽回とは言えず、緩和程度だが
そんなことを、CICの嬉声が響くコックピットの中で、無茶な操縦のためにそこかしこ体をぶつけながら、思った
やはり前言を撤回しよう
この変態サディストめが、ちくしょう

63 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:48:26 [ I8.hcAPY ]
CIC「ところで、内藤君は好きな人いるのかい?」

一通りしたかった操縦はしきったのか、CICは先程から計器をかまっている
彼女はまず、重力下でシートベルトのない人間を乗せたままバレルロールをすると、どうなるかを知るべきだ
金輪際彼女の操るMSには乗らないと、シートの後ろに倒れ伏したまま、硬く心に誓った
まぁ、金輪際そんな機会などないだろうが、多分

CIC「ねぇ、いないのかい?」

CICはサイドからボードを引っ張り出すと、流石というか、かなりの速度でキーを弾きだした
確かに凄くはあるが、本業ゆえこの能力も当然だろうと納得した
しかし、感心するよりもまず、不安になった
バグのプログラムでも書き込んでいるのではないだろうか
この人はやりかねない
戦闘中、突然阿波踊りをはじめた機体を指さして、げらげら笑う様子が目に浮かぶ
手許を覗き込んでみると、ただスペックデータを閲覧しているだけのようで、ふ、と安堵に肩を撫で下ろした

64 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:50:50 [ I8.hcAPY ]
CIC「はいはい、聞いてるか、少年?」

モニターに目を向けたまま、CICが再度言う
すいません、聞いていますよと返すと、なら答えてよと切り返された
好きな人、好きな人、って……

( ^ω^)「好きな人……皆のことが好きですお」
CIC「ふーん。内藤君って、バイセクシャルだったんだ」
( ^ω^)「ば、ばいせく……?」

単語の意味がわからず口ごもると、何だ知らないのかと言いたげに、じとりした目を向けられた
しかしすぐに呆れたように溜め息をついて、視線をモニターに戻した

CIC「まぁ、そんなこと本気で考えちゃう君だからこそ、こんな中立なんて道選んじゃったりするんだろうけど。でも、いないんかな、特別な人っていうのは?」

彼女が言いたいのは、恋愛対象としての特別、という意味なのだろう
自分にはいない
今まで恋愛すらしたこともないので、悲しいかな、いるはずもないのだ
ずっと訓練訓練で、恋人なぞ作る暇がなかったんだ、というのは言い訳だろうか

65 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:53:35 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「そういう人は、まだいないですお。それに好きに順番をつけるのは、よくないと思いますお」
CIC「そ。まぁ、それでもいいんじゃない?」
( ^ω^)「……今、物凄く馬鹿にされた気がするお」

非難めいた目を向けると、気のせいだよ、とCICは言った
なので、気のせいということにしておく
別に建前で言ったわけではないし、もてないことの言い訳で言ったわけではないからだ
言い訳で言ったわけではないからだ

( ^ω^)「特別な人、かお……」

難しい顔をして、顎に手をやる
今は特に、そういった感情は無い
昔、記憶のない時期、マナにあこがれていたことはあった
が、今では状況も変わってしまって、今や自分にそんな資格はない
自分自身、彼女と踏み込んだ関係になろうという気は萎んでしまっている
なんだか落ち込んでしまう
伏目がちに溜め息をつくと、CICがボードから手を離し、ちょっと難しい話するよ、とシートにもたれかかった

66 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/10(土) 23:54:50 [ I8.hcAPY ]
CIC「人間って面白いモンでさぁ、そういう感情……なんていうの、好きっていう気持ちが強くなると、他のものなんかどうでもいい、その人さえいれば、なーんて本気で考えちゃったりするのよね」
( ^ω^)「……はい?」

言わんとするところが理解できず、眉根を寄せる
突然何を言い出すのか、この人は
そうなんですか、と相槌を打つと、そうなんです、と自分だけ納得したかのように深く頷いた

CIC「まぁ、そんなわけで、そう言う人たちはたちが悪いってことさ。客観的にはおかしいことしてても、本人はその大切な人っていうのを、神格化しちゃったりしてるからさ。自分に矛盾を感じなかったり、暗にその人のせいにしたりして、自分を正当化してるんだよね」
( ^ω^)「ね、って言われても……」
CIC「馬鹿なことだ、とはわかってるんだけど、わかってても止めらんないんだよ。なんていうか、そう、火に突っ込んでく蛾みたいなもんさ」

ほんと馬鹿だよね、と呟くようにしてCICは言う
自らをも自嘲するような含みがあったのが、少し気になった

67 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/11(日) 00:00:49 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「でも、なんでそんなことを今?」
CIC「いやねー、そういう人も多いと思うんだあ、この戦争。もちろん、昔の戦争もね。君もわかると思うけれど、往々にして厄介な人が多いんだよ。だから気をつけて、ってね」

気をつけてと言われたところで、実際的に誰が何を考えているかなど知る由もないので、どう気をつければよいのやら
だが確かにそういった性質の人間は厄介だろう
以前、マナたちのためにと戦い続けていた自分を思い出す
大切な何かを守る為という大義名分に自分の罪をなすりつけ、そしてやがて何も見えなくなる
ぞっとする、自分は狂っていた
人を殺しても、あのころは何も感じなかった
むしろいいことだと、もっと敵を殺せば幸せになれるなどと本気で考えていた
というか、昔の僕のことも暗に言っているとしたら、少し失礼じゃないか?
まぁ、たしかにおっしゃる通りではあるわけだが

CIC「いい、油断しちゃダメだよ? 次の戦闘はきっと最後になると思うけれど、決戦ってのはやっぱり皆必死になるもんだから。自分のこと、ちょっとばかし強いなんて考えてたら、足下すくわれて殺される」

珍しく真剣な面持ちで、CICがこちらに顔を向けて言った

68 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/11(日) 00:04:22 [ I8.hcAPY ]
CIC「だからね、時には割り切ることも必要だよ。相手をどうやっても説得できないな、って思ったら……ね」
( ^ω^)「……心配してくれてるんですかお?」
CIC「べ、別に心配してるわけじゃないんだから! 勘違いしないで!」
( ^ω^)「え……」

急な態度の変化についてゆけず、思わず眉を寄せる
するとCICはにたりと笑みをこぼし、気障っぽい動作で後ろ髪を払った

CIC「どう? ツンちゃんの真似なんだけど、似てた?」

ツンって、そんなことを言うキャラだっただろうか
そんな気もするが、疎遠期間が長かったため、どうも確信がもてない
最近は態度もよそよそしく、ああ、もう、はやいところ仲直りして楽になりたいものだ

CIC「どーなんよ。似てるでしょ?」

眉をしかめていると、CICは再び後ろ髪を払ってみせ、感想を要求してきた
なんとも言えず肩をすくませてみせると、頬を膨らませて、不貞腐れたようにモニターに視線を戻した

69 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/11(日) 00:07:38 [ I8.hcAPY ]
CIC「そっれにしてもこの機体さぁ、射撃武装が全然ないんだね。レールガンだけって、どうよ?」

そう言って、CICは"アブソリュート"の簡易全体図を引き出し、腰部を指差した
先程のやり取りを継続しての不満顔で言われたのだが、さすがに機体の装備にまでついて文句を言われるいわれはない
元々機動性を重視した機体なので、"リアライズ"などのように大掛かりな射撃兵器などは装備は出来ないのだ

( ^ω^)「どうよ、って……。この機体は近接仕様ですし」
CIC「かーっ、ダメダメじゃなーい! MSの花っていったら、銃撃戦でしょー? 近接距離の格闘なんか全然スマートじゃなーい!」

無茶な憤慨をぶつけられ、ブーンは苦笑を浮かべた
そんなことならはじめから、ツンにでも頼めばよかったのに
そう漏らすと、CICはそういう問題じゃないよ、と怒鳴った
しかしその瞬間、あたりに轟音が響き渡り、CICの言葉はかき消された
何事かと前部モニター越しに外界を覗くと、少し離れた場所でMSが二つに折れ、煙の尾を引いて倒れ伏す光景が広がっていた
敵襲?
最終決戦の前に、不確定要素の芽を摘んでおこうと?
周囲に注意を払いながら、ブーンはパイロットシートから身を乗り出した

70 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/11(日) 00:10:25 [ I8.hcAPY ]
( ^ω^)「操縦代わってください! 敵かもしれない、お……」

言うも、しかしCICはすぐには退こうとしなかった
ふと目を下に向けると、操縦桿のトリガーに、CICの指がかかっている
CICは顔を引きつらせ、苦笑いを浮かべていた

( ^ω^)「あの……何しました?」
CIC「いやぁ、あれってたしか、マナちゃんのMSだったよね……」
( ^ω^)「撃ったんですか、レールガン……」
CIC「まぁ、撃ったっていえば撃ったような撃ってないような、はは……」

CICはまだぶつぶつと何かを呟いていたが、先程までスペックデータが表示されていた手元の計器の計器が、ロックスクウェアを表示させていた
撃ったのは誤魔化しようがないだろう、無駄な抵抗を
改めて試作型"ヘル"に目を向けると、腹部に銃撃を受けたらしく、おそらく大破、もといスクラップ同然と化している
まったくどうするんだと非難の目を向けると、CICは誤魔化すように再びあははと笑い、計器に手を伸ばした

71 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/06/11(日) 00:12:52 [ I8.hcAPY ]
CIC「じゃ、後は任せるぞ、少年」
( ^ω^)「任せた……って?」
CIC「私、用事が出来ちゃってさ。またねー」

言い終えるとほぼ同じタイミングで、コックピットのハッチが上下に割れるようにして開いた
次の瞬間には、CICは空中に飛び出していた
彼女は器用に五点着地法を成功させ、更に前回りで受身を取ると、脱兎の如くそのまま走って逃げていった
ハッチは腹部にあるので、高度約十メートルか
一体なんなんだ、あの人は、あの身体能力は
一瞬の出来事に感心しつつも呆然としていると、厳つい顔をした整備士長が計器の中に現われた

整備士長「何をやっているんだお前は!」

慌ててハッチを閉じ、コックピットにつく
すみません、すみません! と頭を下げながら、機体を立ちあがらせた
とその時、"ストレイヤー"の足許が不意にぐらついた
何事かとサイドモニターの撮影場所を切り替え、様子を確認する
戦車を踏み潰していた

整備士長「12億円の戦車がぁぁぁー!」

絶叫する整備士長の顔を眺めながら、ブーンはシートにぐったりと体を預け、彼女の言うことを聞いた自分の浅はかさを後悔した
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【2006/06/13 17:32 】 | ( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです | comment(0) | trackback()

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