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【2017/06/26 15:57 】 |

( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです part18
22 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:19:05 [ 1Erz7Tfk ]
ツァール「XとYはだから……因数分解の形は……こうなって……。それからこの式を……」

部屋に備えられた小さな机に肩を並べて、少女が男に勉強を教えている
数式の敷き詰められた教本を睨みつけながら、ゼノンはしきりに表情筋を動かして唸っていた

ゼノン「わからん。俺が理解できる言葉で喋ってくれ」
ツァール「これ……そんなに難しくないよ……」
ゼノン「んなこといわれても、わかんねぇもんはわかねぇんだよ……」

ぼやきながら、ゼノンは大きく息を吐いて椅子にもたれかかった
ツァールが隣で溜め息をつく
自分から頼み込んで勉強を教えてもらっている以上、真面目にやるのが筋だ
だがいざこうして小難しい話をされると、集中し続けるのは困難だ
かなりの時間が経過したような気もするが、実際には一時間も経っていない

23 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:19:39 [ 1Erz7Tfk ]
ツァール「じゃあ……加法定理……やる……?」
ゼノン「かほて……?」
ツァール「やっぱり止めとく……」

呆れたような溜め息をつき、ツァールは頬杖をついてペンをくるくると回しはじめた
器用な奴だと感心しながら、机の上の教本を手に取る
B4サイズの小さめのそれをパラパラとめくる
先程やっていたものよりも難解そうな数式が、たくさん息を潜めていた
見ているだけで目が痛くなる、頭も痛くなる、ついでに胃も痛くなる
はぁと溜め息をつき、教本をぽいと投げ捨てた

ツァール「丁寧に……借りたんだから……」

緩慢な動作で、ツァールが教本を手にとって手許にやった
ツァールは、普段はおっとりというか、とろくさい
MSに乗ってる時は結構機敏な動きと比較すると、どうしてこいつがMSを動かせているのだろうと思うくらいだ
などと、頬杖をつきながら考える
ツァールは暇つぶしにかルーズリーフに数式を書き写し、淀みなくペンを動かしていた
出来る奴からすれば、なんのこともないのだろう
だが、出来ない俺からしてみると、天才なのではないだろうかなどと思えてくるから不思議だ

24 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:20:13 [ 1Erz7Tfk ]
ゼノン「それにしても、一体なんの役に立つんだ、それ?」

かねてからの疑問を、ついに問い掛けてみた
前々から誰かの意見を聞こうとは思っていたが、親しく、それでいて頭のいい人間が周囲にいなかった
故に、こうして秀才の意見を聞くのは初めてのことだ
少しばかりわくわくしながら、ツァールの返答を辛抱強く待った

ツァール「……テスト……?」

少し考えるように口元に手をやり、そしてポツリと呟いた
ツァールの二言目を待つゼノン、口を開く気配のないツァール
少しの間、微妙な沈黙が流れる

ゼノン「……そんだけか?」
ツァール「……多分」

もっと、あれこれどういうときにこう役だって、などという話をいくらか期待していたのだったが、少し拍子抜けだ
だがしかし、簡単な計算しか出来ない俺が実生活でも特に困りはしないのだ、ある意味納得出来る話でもある

ゼノン「つか、ならなんでテストでしか用足さねぇのにわざわざ覚えるんだ?」

率直に疑問に思ったことを口にする
ツァールは返答に困っているのか、ルーズリーフに目を向けたまま眉根を寄せた

25 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:21:01 [ 1Erz7Tfk ]
ツァール「……そういえば……こんなの何処で使うんだろう……」

意見を求めるようにこちらを見やり、そう言う
知るかよと返すと、ツァールはルーズリーフに目を戻して首をかしげた
そうか、と椅子にもたれて伸びをする
やはり勉強などしたところで、結局は無用の長物なのだ、俺たちには
欠伸をかみ殺して、机に突っ伏した
隣から再び、黒鉛のけずれる音が聞こえる

ツァール「というか……なんで急に……こんなこと……」
ゼノン「あん?」
ツァール「勉強……嫌いじゃ……なかったの……?」

ルーズリーフに目を向けたまま、そう言う
しかし喋っているのにもかかわらず、ペンは迷いなく数字を書き込んでいく
やっぱり頭の出来がどこか違うんだろう、再びそう強く納得した

ゼノン「なんだ、そのな……やっぱ、勉強できたほうがいいのかもな、ってよ」
ツァール「……そう」

ツァールはちらとこちらに顔を向けると、興味なさ気に頷き、すぐに視線を手許に戻した
自分から質問してきたくせにそっけない、いつものことだが

26 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:21:38 [ 1Erz7Tfk ]
実際のところ、こんな時に勉強を教えてもらおうなどと考えたのは、前回の戦闘のせいだろう
俺たちの生きる場所は戦場、それに文句はない
快感を得られるあたり、むしろありがたいとすら感じる
だが、もし戦争が終ったらと仮定すると、だ

ゼノン「……あー、ったくよぉ!」

すっくと椅子から立ち上がり、頭をがりがりとかきむしった
また弱気になってしまっている
この調子では、戦場で殺されてしまうかもしれない
そう自戒しようにも、心の中で渦巻く何かが、もやとなって思考を曇らせている
葛藤というものなのだろうか、こんな感じは初めての体験だった
苛々する

27 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:22:22 [ 1Erz7Tfk ]
ゼノン「……なぁ、俺らって正しいのか?」

ツァールがこちらを振り仰ぎ、意図を測りかねて困り顔になった
当然の反応だろう、俺も意味がわからない
はじめは俺のため、そして途中からはマナを守るため
だがそれは敵も同じ、だから向ってくる、殺し合いになる
そんな当然を、愚かだと言い放った白いMSのパイロット
正しいのは誰だ?
そもそもからして、正しいとはなんだ? 何をもってして正しいとする?
誰が正しいを決める? そして、俺の正しいはなんで、何処にある?
正しい、そのたった一つの言葉に対して、いくつもの疑問符が溢れてくる
頭の中がぐちゃぐちゃになって、沸騰しそうだ
もしかすると、既に沸いてしまっているのかもしれない
正しいの定義すら、俺にはわからない

28 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:23:09 [ 1Erz7Tfk ]
ゼノン「わかんねぇんだ、俺は馬鹿だからよ。何が正しいのかわかんねぇんだ」

自分たちが正しいのかもしれない、また反対に敵達の言い分が正しいのかもしれない
もしくはあの白いMSに乗っていた奴の仲間の連中の言い分が正しいのかもしれない
いずれもが正しく、間違っているような気がする
昔の俺なら、そんなこと知ったことかと、勝った奴が正しいと結論付けていただろう
だが、今はそう割り切ることは出来なくなっていた
マナが死んだのは、俺が間違っていたからではないのだろうか
そう考えると、もはや敵を砕くことで快感など得られない
人殺しの責をなすりつける対象の大義名分が、崩れてしまっている

ツァール「……正しいのは……お父さん……」

ペンを動かしていた手を止め、ツァールが小さく言った

ツァール「私の正しいは……お父さん……」

おまえの親父が、と問う
ツァールは頷き、顔を伏せた

ツァール「でも……ゼノンの正しいは……私にはわからない……」

それだけ言うと、何事もなかったかのように視線を手許にやった

29 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:23:41 [ 1Erz7Tfk ]
どういうことだ
ツァールの正しいと、俺の正しいは違うということなのだろうか?
今こうして煮え切らない思いを抱えているということは、どこか地球連合、オットフリートに疑問を感じているからなのだ
ツァールのオヤジは、俺の正しいではない
ならば俺は、何を正しいと価値観に信ずればいいのだろう

ゼノン「わかんねぇ、か……」

口の中だけで言葉を発し、少し目線を下げてツァールを上から見下ろす
俺にはさっぱりわからない問題を、いとも簡単に、まるで魔法のように解き明かすツァール
それなのに、簡単な一つの問いに解を俺に与えてはくれない
答えを出そうと思えば、それは可能だ
マナが死んだと聞いたとき、俺は結論を出した
ただ己を満たすために敵を砕ければ、それでいいと
だがそれに対して俺は、やはり納得することは出来ていない
それは俺の答えではない気がする
俺は、何を正しいとしたいのだろう?

30 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:24:23 [ 1Erz7Tfk ]
ゼノン「さっぱりわかんね……」

ぼそりと呟き、おぼつかない足取りでベッドへ近づき体を投げ出した
シーツの柔らかい感触が、体を包む
ツァールは俺の勉強続行を諦めたのか、小さく溜め息をついて教材を片付け始めていた
手近にあった枕に顔を埋め、目を閉じる
難しすぎてわからない、軽くてもやもやしたものが、頭の中を漂っている
手を伸ばせばつかめそうなのに、何処か遠くにある、不思議な感覚
だが不快感はなく、むしろ不可解な充実が心を満たしていた

31 名前: ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 投稿日: 2006/05/28(日) 00:25:47 [ 1Erz7Tfk ]
ゼノン「……なぁ」

枕に顔を埋めていたので、くぐもった声がでた
ツァールがなに、と欠伸混じりに言った

ゼノン「やっぱ勉強、もうちょっとだけ教えてくんね?」

ごろんと寝返りをうち、ツァールに顔を向けて頼む、と手を合わせた
ツァールは少し考えた後、いいよと教本をファイルから取り出し、机の上に広げた
サンキューと口元を歪め、ベッドから飛び降り、ツァールの隣の席におさまる
渡された教本に目を通す
まだ時間はある、もっとじっくり、ゆっくり考えればいいだろう

ゼノン「ツァール」
ツァール「なに……?」
ゼノン「ありがとうな」

ゼノンがツァールに微笑みかける
ツァールもつられて微笑みを返した
正しい、か……
俺の正しいは、俺自身で見つけよう
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【2006/05/28 18:44 】 | ( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです | comment(0) | trackback(0)

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