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【2017/08/24 06:26 】 |

( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです part9
922:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 00:55:43.55 ID:W1erObo60
モニターの発する無機質な青白い光の中で、一人佇む
仕官<コロニーの破壊、無事に>
その報告に、そうか、と返す
オットフリート「次の戦闘には私も出る。艦を手配しておけ」
わかりました、とモニターの向こうで男が言い、再び辺りは端末が発する低い駆動音のみとなった
目を細め、閉じる
ブエル、お前と私の望む世界は、違うのだ


924:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 00:56:32.28 ID:W1erObo60
―――コロニー撃破前

ヴィネ「父上……」
決して誰にも見つからぬよう、オットフリートは地下に居住地を構え、そこからヴィネに指示を出していた
モニターに、ヴィネの顔が映る
オットフリート「どうした……」
ヴィネ「"イシューリエル"を、強化して欲しいんです……。絶対墜ちないように、強く……」
自分のことをどう呼べ、と指図した覚えはない
そんなこと、どうでもよかったからだ
所詮は、ただ造っただけにすぎない人形
自分の遺伝子が入っているとはいえ、何の感慨もわかない
それでも、これは自分を父上と慕う
オットフリート「"アブソリュート"はもういない。連中に用はない」
モニターの向こうで、ヴィネが顔を悲しげに俯けた


925:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 00:57:22.89 ID:W1erObo60
娘……ヴィネは、少しづつ変わってきていた
何の疑問ももたなくていいように、何も知らなくていいように、そう育ててきた
いつからだっただろうか、感情が芽生え始めたのは
少女だったヴィネを、議長に立ててからだ
少し、外へ出すのが速すぎたかもしれなかった
だが、時間がもうあまりないのだ
寿命は、どうしようもなく避けられない
ヴィネ「お願いです! 父上!」
今にも泣き出しそうな、苦痛で歪んだ表情
誰が、この感情を教えたのだ
いつのまにかヴィネは、色々な表情をするようになっていた
昔はピクリとも動かさなかった表情も、今では豊かになってしまった
少しだけ微笑みそうになるのを、押し止める


926:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 00:57:45.54 ID:W1erObo60
オットフリート「……わかった。だが、今回が最初で最後だ」
ヴィネは、ありがとうございます、と喜色を満面に浮かべた
無表情を装い、通信機のスイッチを切る
その時、入れ替わるようにモニターに再び通信が入った
仕官<オットフリート様。イーダリルの兵器工場が襲撃を受け、破壊されました。……いかが致しましょう?>
モニターの向こうで、淡々と仕官が報告をする
オットフリート「かまわん。捨て置け」
そう一言だけ返し、モニターのスイッチを切った


927:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 00:58:50.37 ID:W1erObo60
―――現在

端末のキーを叩く
元々、軍事工場など戦争が終れば破壊するつもりだったのだ
戦意を煽れただけでも、役に立った方だ
憎、恨、怒、忌、呪、滅、殺、怨
この世に予測できないものがあるとすれば、それは自然と、人間の感情だ
ありとあらゆる不の感情は、時として世界を脅威に陥れる
だが、人はもろく、儚い
強大な肉体もなければ、悠久の時を生き続けられるわけでもない
ならば、脅威となるものは何か
それは、力だ
力は全ての感情を、具体的に振るうことが出来る、武器になる
だからこそ、世界を支配し、力を衰退させ、戦いが起こらぬようにとしてきた
それなのに何故、わざわざに宇宙へ行き、力を蓄えるのだ
おとなしく、地球にいればよかったではないか


928:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 00:59:31.30 ID:W1erObo60
そしてやはり、奴等は力を生み出し、蓄えていた
せっかくここまで、牙を削り終えたというのに
世界のためと、最後の力を、核を放った
しかしそれすらも、奴等は防いでしまった
戦いを始めて、再び牙は硬く鋭くなってしまった
力は、戦いの役にしか立たないものだ
それなのに何故、それを生み出す
何故、発展してゆく必要がある
何故、高みへ行く必要がある
変わらない時間を、平和な時に
オットフリート「お前は、邪魔だ」
終末のシナリオの記されたテキストデータを、送信する
奴等も、終わりだ


929:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:00:35.87 ID:W1erObo60
ブエル「コロニーがっ!?」
入ってきた報告に、耳を疑う
仕官「はい。第7コロニーが奇襲を受け、大破しました……!」
それを伝えにきた仕官も、怒りに眉を寄せ、手を震わせている
警告もなしに、一方的に攻撃、だと!?
ブエル「オットフリートめ……!」
強く拳を握り、歯を食いしばり、怒りを内に止めようとする
我等が、一体何をしたというのだ!?
仕官「オットフリート……? 連中の頭は、ヴィネ・ミュラーでは?」
怪訝そうな表情で、仕官が口を開いた
ブエル「あれは操り人形でしかない。裏で糸を引いているものがいるのだ……」
人払いを指示し、自室に一人、怒りをたぎらせる


930:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:01:34.25 ID:W1erObo60
オットフリート・ミュラーとは、古い知り合いだった
"アザト―ス"
それは、オットフリートとブエル、二人で作ったものだった
堕落した政治、一向に無くならない貧富の差、そして先の暗い世界
たとえ汚い手を使おうとも、世界を変えようと、立ち上がった
世界を幸せに、救おうと
そして、長い年月をかけながらも、裏の世界で二人は力を得た
汚らしい肥えた狸を金で誘い、秘密裏に殺す
そして、こちらの組織のものを、送り込む
人生の半分を過ぎるころには、世界は実質、彼等のものとなった
しかし、オットフリートは変わった
彼は、発展していくことを止め始めた
自分本位な政策、減り続けてゆく人間、失われてゆく技術
少しづつ、衰退してゆく世界
奴は、力を手に入れて、変わってしまった
世界を、我が物のように考えている


932:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:02:03.31 ID:W1erObo60
そして、ブエルはオットフリートと決別し、宇宙へとのぼった
無重力を生かした工学産業
発展してゆく技術、広がってゆく可住域
宇宙に住むもの達は、順調に独立の道を歩んでいた
そして、突然の攻撃
奴は、抜け出した我々が、邪魔なのだ
端末を操作し、いずれくる審判の日のためにと造った、決戦兵器を映し出す
"ゴスペル"
道を切り拓きし我々に、福音を
私が世界を、救ってみせる


933:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:03:14.69 ID:W1erObo60
二つのデータを見比べながら、溜め息をつく
彼等は見えなくなってしまっている
世界を保守することも、加速させることも、一向に構わない
だがそれは、何のためだった?
端末を閉じ、ネルガルは席を立った
大きな本棚の前に立ち、分厚い本を引き出す
その裏にある、小さなスイッチを押す
本棚が鈍い音を立てて動き、その奥には下へ向う階段があった
エレ……、君がいたかった世界は、私と同じだよね?
人生で、一番一緒にいたであろう女性の名を、口にする
地下に広がったハンガーに、足を伸ばす


934:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:03:58.65 ID:W1erObo60
ネルガル「エア……」
一機のMSの前で佇んでいた、少年に声をかけた
少年はこちらに気付くと、顔を動かした
エア「なんですか」
ネルガル「……そろそろ、始めるから」
少年はネルガルの言葉を聞くと、少し目を伏せたあと、MSを見上げた
エア「そうですか……」
何かに思いをはせるかのように、上を向いたまま、彼は目を瞑った
本当に、申し訳ないと思う
これからの世界を生きてゆくのは、彼らだというのに
力のなかった自分のせいで


935:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:04:17.86 ID:W1erObo60
エア「あまり自分を責めないで下さい。僕は、構わないですから」
嫌に大人びた、儚げな微笑みを、彼は浮かべた
本当にすまない、と微笑みを返す
ヱイル「こんな所で……。珍しいな、二人が一緒にいるのは」
別の入り口から、ヱイルが入ってきた
ヱイル「そろそろ、なのか?」
怪訝な表情で、少女が言う
ネルガル「もうすぐ、ね」
もうすぐ、はっきりとするだろう
最も望まれている世界は、一体何なのかが
まだ、わからない


936:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:05:10.46 ID:W1erObo60
('A`)「…………」
暗い部屋の中で、ドクは一人だった
部屋の窓の外には、漆黒の世界が広がっていた
小さく瞬く、星々の世界
今まで墜としてきた敵、工場の民間人、そして……ブーン
彼等は、俺と変わらない
同じ思想、理想の元、戦っていた
俺はそれを、殺した
だがそれで、俺はアイベルを、皆を守ることが出来た
今は戦争なのだ、敵に同情などしている場合ではない
戦場で過ちを認めるということは、負けを意味する
弱肉強食
それが自然の摂理だ


937:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:06:07.58 ID:W1erObo60
その時、艦にアラートが走った
CIC<前方に、地球連合艦隊を確認! パイロットは至急搭乗機へ!>
その言葉に、だんと机を叩きながら立ち上がる
奴等は、俺が地球で攻撃を仕掛けている間に、コロニーに奇襲をかけていた
それは一瞬のことで、防ぎようが無かったらしい
いや、それは一般向けの、言い訳の情報
本当は、それなりの警戒態勢がしかれ、MSの数は十分数配置されていたはずだ
連中も、本腰を入れてきたということだ
だが、それだからといって負けるわけにはいかない
負けは死を、世界の崩壊を意味する
アイベル「ドク……」
パイロットルームへ向かう途中、アイベルとはち会った
ぎこちなく笑顔をこちらに向けたアイベルから、目を逸らす
その悲しそうな目に、心が締め付けられる
何も言わず、脇を通り抜けた
守ったのに、守れたのに
まだ、幸せになれない


938:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:07:10.25 ID:W1erObo60
ハンガーへ足を運び、コックピットへ入る
"グラム"を失ってしまった今、"ヘイト"は"ヘル"の性能と大差ない
量産型だというのに、驚異的なスペックだ
果たして、無事に守りきることが出来るだろうか
いや、出来るかではない、出来なければならないのだ
負けるわけにはいかない
('A`)「ドク、"ヘイト"、行くぞ!」
漆黒の闇の中へ、機体を走らせた
邪魔をするというのなら、全部殺すだけだ


939:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:12:13.79 ID:W1erObo60
≪もし私があの中にいても、あなたは銃を撃ちましたか……?≫
マナはそう言うと、顔を俯けて通信を切った
ゼノン「あーあー、意味わかんねぇ。撃つわけねぇだろうが、ったく……」
自室で、ゼノンはベッドに腰掛けながら、ぶつぶつと呟いていた
マナが言っていた、言葉の真意がつかめない
このところ口数も少ないし、声をかけてもいつもと変わらない顔で微笑むだけだ
まぁ、それはそれでいいんだが
ゼノン「なぁツァール、お前わかるか?」
反対側のベッドで、ぬいぐるみを抱いているツァールに声をかける
ぬいぐるみに埋めていた顔を少しだけ上げ、暗い目をこちらに向ける
ツァール「私……あいつ……嫌い……」
ゼノン「あぁん?」
昔からコイツは、好き嫌いの偏った奴だった
こんな暗い性格で、口数も少なかったから、ほとんど友達なんて奴もいなかったが
コイツの嫌いの基準も、いまいちよくわからない
ゼノン「まぁ、別にいいけどよぉ……。あー、なんだってんだ、くそっ!」
どれだけ考えても、一向に顔を見せない答えにがりがりと頭を掻く
やっぱり、俺が馬鹿だからだろうか?
そりゃあ、数学だのなんだのの成績は見れたもんじゃなかったが……


940:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:14:52.23 ID:W1erObo60
ツァール「ゼノン……お腹空いた……行こ……」
優しい手つきでぬいぐるみを枕元に置き、こちらへ寄ってきてツァールが言った
そういえば、もう昼か
宇宙とかいうこの場所は、いつもいつも真っ暗で、一体何時なのかわからない
全くもって不便な場所だが、ここは敵陣の近くで、戦闘が起こる可能性が高いらしい
その辺はありがたかった
また、格好いいところを見せてやろう
ツァール「……ゼノン……」
こちらがベッドに腰をかけたままなので、ツァールも立ち尽くしたままだった
空腹というまではいかないものの、確かに腹は減っていたが、今はマナの言葉が気になってそんな気分にはならなかった
ゼノン「俺はいい。お前一人で行ってこいよ」
そう言って、ベッドにどかっと倒れこむ
マナがあの中……コロニーの中にいたら、撃ちはしない
撃ったら死んじまう
だが、マナがあの中に行くわけが無い
やっぱり、意味がわからない


941:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:15:22.32 ID:W1erObo60
はぁー、と盛大に溜め息をつき、天井を眺める
ツァールが上から覗き込んできた
ツァール「一緒に……行こ……」
今日に限って、やけにしつこい
というか、まぁ普段からこんな感じだが
無表情でぼそぼそと呟くから、いまいち何を考えているかもわからない
ゼノン「あー、わかったわかった」
ベッドから立ち上がり、伸びをする
大体からして、俺が細かいことをねちねちと考えること自体がおかしいのだ
ぱっと浮かばなかったものなど、小一時間考えてもわからない
マナは疲れていたのだろう、戦争さえ終えればきっと元気になる
ゼノン「ほら、行くぜ」
ツァールの頭をぽんと叩き、食堂へ向って歩き出す
少しだけ嬉しそうに顔を動かしたツァールを、少しだけ微笑ましく思った



942:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:16:19.77 ID:W1erObo60
―――回想

保母「今日からみんなのお友達になる、ツァールさんです。仲良くね」
施設の子供を全員呼び集めて、一体何事かと思っていると、保母長はぬいぐるみを抱えた少女を連れてきた
辺りを見回すと、皆何の召集か知っていたらしく、特に少女に興味を示すわけでもなく、思い思いの反応を見せていた
少女と似通った表情をした金髪の女が、無言で部屋を出て行ってしまう
この施設に入ったのは、だいたい一ヶ月ほど前だった
とはいえ、元々独り身で親などおらず、ただいる施設が変わったという事柄以外は何も変わらなかった
別に親しい友人もいなかったし、何かやりたいことがあったわけでもない
一つ変わったことがあるとすれば、なんだかよくわからない訓練のようなことをさせられることだった
その訓練の内容も、一人一人少しづつ違っている
体もすでに成長期を迎え、しばらくそれを続けるうちに、はじめは辛さに喘いでいた体も、それに慣れてしまっていた
むしろ前の施設でやらされていた、一体なんの役に立つのかわからないような勉強をさせられるよりも、こっちの方がずっとましだった
ツァールとかいう新参者を、なんとなしに睨んでみると、目を逸らされた


943:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:17:16.24 ID:W1erObo60
保母「ゼノン君、お部屋、一人で使ってたよね?」
解散を指示されて、午後からの訓練に備えようと自室に向うところで声をかけられた
ああ、と答える
保母「じゃあ、ツァールさんが同じお部屋に入るから、仲良くしてあげてね」
それだけいうと、反発する前にそそくさと行ってしまった
なんで俺なんだよ、と言いたかったのだが、保母に逆らうとその日の食事の量を減らされてしまう
それはあまり賢い行為ではない
それに、気の弱そうなあいつをパシリとして使えるかもしれない
他にも思春期特有の、背徳感溢れる行為が頭をよぎったが、おおむねはパシリの方向でいこうと心に決め、自室へ戻った
昼食を終え、午後の訓練行程をこなすために大きなグラウンドに向った
一体何のためにこんなものを作ったのかはわからないが、この施設の設備などはなかなかのものであった
機材にIDカードを刺し、タイムカードをつける
適当に体をほぐした後、ランニングを始める


944:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:17:41.67 ID:W1erObo60
しばらくすると、ツァールが外へ出てきた
ぬいぐるみを抱え、金髪の女と共に俺の知らない大人と手をつないで施設の正門へと歩いていく
それを横目で見ながら、楕円のグラウンドを走る
厳格そうなその男は、ツァールの手にぽんと手を置くと、何かを言って車に乗り込んだ
ツァールが車にすがろうとするのを、金髪の女が止めている
男は車の窓を開けることもせず、振り払うように行ってしまった
少女は、肩を震わせている
その光景を見つめていると、訓練官にどやされてしまった


946:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:19:51.99 ID:W1erObo60
ゼノン「なぁー、お前、何でここきたわけ?」
夕食を終え、後は消灯時間まで自由な時間だ
ベッドに転がり、談話室から勝手に持ってきていた週刊誌に目を向けながら言った
ツァールは何か喋るわけでもなく、ぬいぐるみを抱いて押し黙っていた
ゼノン「なぁー、そのぬいぐるみ、何?」
長い前髪を前にたらし、表情がうかがえない
ゼノン「なぁー、なんか言おうぜー?」
最初はパシリにでもと思っていたものの、なんとなくそんな気にはならなくなっていた
気弱な奴かと思っていたが、頑なに口を利こうとしないところは、なかなか凄い
ゼノン「なぁー」
ツァール「……うるさい……」
ゼノン「なにぃ!?」
ぼそりと呟くように言ったその言葉に、激昂して立ち上がる
せっかく仲良くしてやろうと思っているのに、うるさいとはなんだ
雑誌を投げ捨て、どすどすと足音も荒く近づいて、胸倉をつかんで立ち上がらせる


947:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:21:35.43 ID:W1erObo60
ゼノン「てめぇ! 調子に乗ってる……と……」
背丈が違いすぎ、ツァールはほとんど浮いている
顔を上に向けたため前髪がさらりと横に落ち、白い顔が露になる
目にためていた涙が、頬を伝って落ちていく
ゼノン「な、なに泣いてんだよお前……」
喧嘩をして男を泣かせたことは何度もあったが、こういうシチュエーションは初めてだった
故にどう対応していいかわからず、胸倉をつかんでいた手を離す
ツァールは苦しそうに咳き込むと、再び俯いた
堰を切ったように泣き出してしまい、ヒントになるものは何も無いというのに、おろおろと辺りを見回す
その時、ツァールと歩いていた男のことを思い出した
ゼノン「わ、悪かった。もうしねぇからよ……な?」
ぽん、と頭に優しく手を置いてやる
ツァール「……うん……」
しゃくりあげながらも、ツァールは頷いた
それにほっと胸をなでおろし、溜め息をついた


948:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:22:08.56 ID:W1erObo60
ゼノン「で? 結局お前は何でここにきて、そんでこのぬいぐるみは何?」
ツァールの隣に座り、ぬいぐるみを持ち上げながら聞く
これは……熊……か?
熊という生物は、もっと頭身が高く、こんな優しい目をしていなかった気がするが
まぁ、なかなかに可愛らしい
ツァール「お父……さんが……。それも……お父さんに……」
ゼノン「親父ってのは、昼に一緒に歩いてた奴か?」
問いかけに、頷いて答える
あぁ、なんだファザコンか
ゼノン「しかしまー、なんだ。不憫だなぁ、お前もよ」
お前も、とは言ったが、別に俺は不憫じゃない
というか、これ以上にある幸せというものが、いまいちよくわからない
でもコイツは、父親といて幸せだったのに、こんな所に入れられてしまった
それは不憫だろう


949:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:22:50.84 ID:W1erObo60
ツァール「不憫じゃ……ない……」
ゼノン「あ?」
ツァール「お父さん……頑張れ、って……。期待、してるからって……」
嬉しそうにそう言うツァールに、少しだけ嫉妬する
俺は誰にも応援されていないし、期待もされていない
俺も頑張れば、誰かに誉めてもらえるだろうか
ゼノン「……まぁ、とにかくだ。これからよろしくな。俺はゼノンだ」
そう言って、手を差し出す
ツァールは手と俺の手と顔を交互に見た後、受け取った
ツァール「うん……」
気恥ずかしそうに手を取ったツァールの頭に、もう一度ぽんと手を置いてやった



950:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:23:41.21 ID:W1erObo60
そういえばそんなこともあったなと、食事を口に運びながらぼんやりと思う
今や地球連合のエースパイロットとしてオンリーワンの機体を受け取って、作戦の要を務めている
結局、あの施設は何処からともなく子供を集めてきて、養成する施設だったというわけだ
今の俺を思うと、あの頃はやはり不憫ではなかったのだ
ゼノン「しっかし、ここの料理は美味いな。"リンドブルム"はあんなにまずかったのによ」
からからと笑いながら話し掛ける
ツァールはラーメンをずるずるとすすりながら頷いた
ゼノン「ってか、髪の毛中に入ってるぞ」
ツァールが顔を上げると、前髪にスープが滴っている
不機嫌そうにそれを見やるも、特に気にしていない様子だった
頬杖をつき、はぁと溜め息をつく
せっかく素地は悪くないんだから、化粧なりなんなりすればいいのにと思う


951:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:24:20.04 ID:W1erObo60
その時、マナがフラフラと食堂に入ってきた
ゼノン「おっ、マナー!」
マナを見つけると、ゼノンは大声で名前を呼び、手をぶんぶんと振った
それに気付くと、マナは会釈を返してきた
満足げに席に座ると、ツァールがこちらを見ていた
ゼノン「なんだよ?」
ツァール「……バカ……」
ゼノン「うっせぇ!」
そう言い返すと、ツァールはそっぽを向いてしまった
(´・ω・`)<ブリッジからツァール少佐、ブリッジからツァール少佐。通信が入っている。至急こちらへ>
急に通信が入り、名指されたツァールが怪訝そうな顔でスピーカーを睨んだ
ゼノン「通信だってよ。おら、行ってこい」
ツァール「一緒に……」
再びはぁ、と溜め息をつき、まだほとんど口にしていない料理を置きっぱなしにして、ツァールに従った


952:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:28:08.10 ID:W1erObo60
ブリッジへ上がると、視線が集中した
どうも俺たち二人は、あまりよく思われていないらしい
パイロットだからだろうかとも考えたが、マナとは皆普通に接している
やはり、新参だからか?
ツァール「お父さん!」
画面に映し出された男に、ツァールが珍しく喜びを満面にした
オットフリート「久しいな。調子はどうだ?」
いつもとは違うはきはきとした受け答えを聞き流しながら、辺りを見回す
前面の強化ガラスの向こうに、小さく白いものが見えた
コロニーか
そろそろ、戦闘が近いということだ
それにしても、何故ツァールの親父などがこんな所に出張ってくるのだ?
軍人だったのだろうか?


953:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:28:44.08 ID:W1erObo60
オットフリート「では、期待しているぞ、ツァール。……君にも、な」
(´・ω・`)「ええ……」
それだけ言うと、通信は切れてしまった
ショボンだか何とかという名前の艦長が、一瞬険しい表情したのは、何故だろうか
色々わからないことが多かったが、どうでもよかった
結局のところ、勝てばいいんだ
(´・ω・`)「第一戦闘配備だ。……頼むよ」
その言葉を聞いて、待ってましたといわんばかりにツァールがハンガーへ向って走り出した
父親のために頑張るつもりなのだろう
その後を追ってブリッジを出ると、今度はスピーカーから戦闘配備の指令が出た
ゼノン「頑張ってカッコいいとこ、見せてやろうぜ!」
先を走っていたツァールにおいついて、話し掛ける
ツァール「うん……!」
やっと戦闘に出られる
俺たちが一番輝ける場所は、あそこなのだ


954:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:31:41.40 ID:W1erObo60
割とこじんまりとした、たいした武装のない艦だったが、機動性を重視した結果、だと聞いた
よもや戦闘に敗北し、逃走を余儀なくされることはないだろうが、念のためだ
オットフリート「終幕への第一歩だ。手を打ち損じるなよ」
その言葉に、この艦の艦長がしゃちほこばった
オットフリート「ヴィネ、これが終ったあとの処理は任せるぞ」
ヴィネ「はい……」
出鱈目な兵器の名前でも出して、それを防ぐために……
などということを言っておけば、それほど核の使用について批判の声もあがらないだろう
いや、あがったとしてもたいした問題ではないが
ヴィネ「ツァールには、優しいことを言ってあげるんですね……」
こんなことを言うつもりはなかったはずなのに、勝手に口から出て行ってしまった
私は、頑張れだとか、期待している、などと言われたことはない
互いに母親はなく、ほとんど面識も、会ったこともなかった
それなのに、何故彼女だけ……


955:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:32:02.03 ID:W1erObo60
オットフリート「立つ場が違えば役割も違う。必要なものも変わってこよう」
こちらを見ることもせず、溜め息混じりに父が言った
その言葉に、少しだけ目を俯ける
前方には、巨大な白亜の艦があった
隊の最前列、攻撃の要
強く出来たから、絶対に墜ちない、ショボンは死なない
オットフリート「そろそろだ、はじめろ」
オットフリートの声に、艦長が通信回線をオンにし、戦闘開始の声をあげる
強化ガラスのはるか向こうからも、MSが飛び出してきていた
もうすぐ終る、なにもかもが
その先にあるであろうショボンとの平和な日々に思いをはせ、ヴィネは静かに目を閉じた


956:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:34:15.24 ID:W1erObo60
数十機の"ストラス"と"ハルパス"を連れ、敵艦隊へと向う
('A`)「まだこちらの方がパイロットは強いとはいえ、油断するなよ! 敵のほうがMSは強く、多い!」
通信回線を開き、味方の士気を上げる
油断しないだけで、勝てるだろうか
重力のある地球だからこそ、互いに重力に引かれて力も落ちていた
しかし、ここは宇宙で、上下の感覚がない
機体性能が圧倒的な連中に、数で押し込まれては、勝てない
('A`)「散開して、各個に応戦! MSの性能が、戦力の決定的差じゃないことを、教えてやれ!」
ドクの言葉に、MS達が散らばってゆく
ここで負けるわけにはいかない


958:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:36:33.80 ID:W1erObo60
先頭にいた、いつかの紫のMS2機に向けて、牽制にビームを放つ
それを造作なく避けると、"ディザスター"がポッドを開き、バズーカを構え、撃った
ミサイルの中を網を縫うような動きですり抜け、"スルーター"が"ヘイト"に向って急加速して接近してくる
急転回し、最大の速度で後退する
追ってきたミサイルが機体に触れるかというところで機体を急上昇させ、ホーミングを切る
ターゲットロックが外れてそのままコロニーに向っていくミサイル郡にビームを放ち、爆散させる
無茶苦茶なMSだ、こんなに火薬兵器を積んでいるなんて……!
爆発を見届けながらそんなことを考えていると、アラートが鳴った
そうだ、まだ一機―――
振り返りながらビームサーベルを抜き、切り結ぶ
('A`)「くぅ……! ぐっ!?」
切り結んだまま、押し返される
なんて出力だ……!


959:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:39:23.32 ID:W1erObo60
"スルーター"が切り結んでいた左腕を振り上げ、"ヘイト"のビームサーベルを弾く
そして、右腕のビームソードを出力させ、突きを放った
しかし、"ヘイト"はそれをかろうじていなし、距離をとる
すると、後ろにいた"ディザスター"がミサイルを放ってきた
それをシールドを掲げて防ぐ
('A`)「くっそぉぉぉ!」
シールドで爆風をなぎ払い、"ディザスター"へと機体を走らせる
すると、後ろから光条が降り注ぎ、錐揉みしながらをれを避け、2機から離れた
あの細いのは、ビームも撃てるのか
完全に近接戦闘しか出来ないと思っていたが、あの大きな出力口からはビームも出せるというわけか
厄介だ
佇んでいると、"ディザスター"が腰部の砲を跳ね上げ、ビームを放ってきた
それを避け、"ディザスター"へと向う


962:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/19(日) 01:45:28.43 ID:W1erObo60
それを避け、"ディザスター"へと向う
しかし、それを見計らったかのように"スルーター"が"ディザスター"の前に立ちはだかり、ビームソードを出力させて斬りかかってきた
両の手を一気に振り下ろし、ドクはそれをビームサーベルで受け、唸った
しばらく鍔迫り合いを続けていると、急に"スルーター"が"ヘイト"から離れた
"スルーター"のすぐ向こう側に、ミサイルの束が迫っていた
慌ててシールドを掲げるも、シールドは壊れ、弾き飛ばされる
('A`)「ぐっ……ええいっ!」
何とか体勢を立て直し、再び向ってきた"スルーター"にビームライフルを向ける
しかし、それは"ディザスター"が放ったビームで、手許で爆散した
('A`)「こんな奴等に……!」
ビームサーベルを抜き払う
しかし、それは微かな粒子が、心もとなくサーベルを象っているだけだった
"スルーター"が迫る
('A`)「うあぁぁぁ!」
"ディファイアント"を放つも、簡単に切り落とされてしまう
ドクの顔が、恐怖に歪む
その時、"ヘイト"の後ろから、紅い閃光が迸った
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【2006/03/19 01:03 】 | ( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです | comment(0) | trackback(0)

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