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【2017/11/23 10:56 】 |

( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです part7
594:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:02:50.73 ID:lSAjZWfl0
ゼノン「つか、なんなんだよアイツはよぉ! わけわかんねぇ。宇宙連合の人間はあんなんばっかりなのか?」
ツァール「知ら……ない」
ブーンが出て行って、パイロットルームにはマナを含め三人で取り残された
彼等はこちらに目を向けようともせず、何かを言い合っているようだった
少女の声は小さすぎて聞き取れなかったが、男のやけに大きい声がパイロットルームに響く
先程の戦闘、確実に死んだと思った
しかし、直前でシールドが突然爆発し、私は助かった
"アブソリュート"にも"イシューリエル"にも、小さな点を狙えるような火薬兵器は無い
ということは、あの男が乗っていたMSが助けてくれたということだ


596:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:04:17.07 ID:lSAjZWfl0
男が乗っていたMSは、"ディザスター"
両手に300ミリバズーカ砲を抱え、背中にはミサイルポッド
腰部には、前に突き出すようにしてビーム砲を装備している
重火力の、強襲型のMSだろう
そして、少女が乗っていたMSは、"スルーター"
両のマニュピレーターの先から、肘の辺りまで手甲のように細くシールドが装備されている
シールドの先端にはビームのジェネレーターが装備されており、ライフルとしてもソードとしても使用できるらしい
足の甲からすねにかけても、膝の所までシールドで守られており、そこに細くビームが出力される
それ以外の兵装は見受けられず、大型のバーニアとスラスターがあるだけだった
おそらく、"アブソリュートと同じ、"近接特化のMSだ
先程、パイロットルームにドリンクを取りにきた整備士の一人に、スペックデータを貰った
誰が設計したのかは知らないが、よくこれだけ極端なMSを考案したものだ


597:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:04:47.49 ID:lSAjZWfl0
ゼノン「だからよぉ、今金がねぇつってんだろ! いいから貸せよ!」
ツァール「私だって……持ってない……」
男の声があまりにもうるさいので、何事かと目を向けると、自販機の前で何かを言い合っているようだった
軍の自販機は、IDカードを挿せば簡単にドリンクが手に入るようになっている
しかし、違う軍艦に所属している彼等のIDでは、自販機も受理してくれないだろう
命を助けてくれた礼としては小さすぎるが、せめてと思い彼等に近づいた
マナ「あの……」
ゼノン「あぁん?」
二人に声をかけると、ゼノンが振り返った
ゼノン「な、なんだよ」
先程の威勢とは裏腹に、急にしどろもどろになった
変な人だと思いながら、カードを差し出す
マナ「私のIDカードを使ってください。さっきのお礼です」
隣でツァールが、ありがとうと呟いた


598:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:07:05.23 ID:lSAjZWfl0
ツァールを引き連れて、自艦に戻ってきた
ゼノン「艦長、今戻ってきた」
レギン「ごくろう。それにしても、一向にまともに敬語も使えんのだな、お前は。何だ、さっきの呼びかけは」
撤退要求交渉の話をしているのだろう
上からものを言う高圧的な態度に、反発心が首をもたげる
ゼノン「大体、何であんな要求なんかしたんだよ。俺らが行ってぱぱっとやっちまえばよかったのによぉ」
何のための撤退要求だったんだ
戦力的にはこちらが有利だったと言うのに
というか、交渉なんかツァールにやらせればよかったのだ
レギン「まぁ、そう言うな。"イシューリエル"の艦長の嘆願だ。むげには出来ん」
はて、と思う
階級でいえば、この厳ついおっさんの方が上だと聞いていたが
レギン「あの優男は、議会と繋がっているのだ。下手を踏めばこちらの立場が危うい。……甘い考えの、嫌われ者だ。先程の戦闘も、ほとんど砲撃をしなかったそうだ」
レギンが、皺の多い顔で眉を寄せ、眉間が皺だらけになる
きっと、ずっとこういう顔をして生きてきたのだろうと、何となしに思う
まぁ、こんなおっさんに興味など欠片もわかないが
それより、さっきの女
IDにはマナ、と書いてあっただろうか


599:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:08:10.85 ID:lSAjZWfl0
ゼノン「なぁおっさん」
レギン「艦長だ。次いったら営倉にぶち込むぞ」
ゼノン「向こうの艦にMA乗りがいるんだけどよ、こっちの量産型の試作機をそいつにやってくれ」
TWS-102試作型"ヘル"
元々、MSのフレームは、接収できた破片から、資源の豊富な地球連合はほぼ製作済みだったのである
問題はバッテリーと、ビーム兵器のみだった
それも手に入り、MSは量産のラインに入ろうとしていた
試作型"ヘル"は、量産機の先行で作られ、オンリーワンの機体と共に戦場へ出ることとなっていた
最初に与えられた任が、"イシューリエル"の援護
本部へついた際には、俺たちは"イシューリエル"の配属となる予定だ
ゼノンの話を聞いたレギンは、呆れたような怒ったような、複雑な表情をした
レギン「せっかくの志願達の士気を挫くつもりか? それに向こうには、"ラジアル"があるだろう」
ゼノン「何が志願兵だっつの。MAでMS相手に墜ちずにいられる技量を持った人間だぞ。志願兵とやらは、そいつより強いのか?」
レギン「む……」
雑魚にいられても、邪魔なだけだ
なるべくならオウンゴールはしたくない
そんなやつらより、あの女のほうがずっと使える
棺桶に銃をつけただけのものに乗せておくには、惜しい
それに……
レギン「わかった……。そう手配しておく」
ゼノン「お、話がわかるじゃねえか、おっさん」
レギン「営倉に行くか?」
レギンがこめかみをぴくぴくと引きつらせている
少しからかいすぎたか
ゼノン「行くぜ、ツァール」
どやされないうちにブリッジを後にする
満足気な表情をしながら、自室へと戻った


600:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:09:35.09 ID:lSAjZWfl0
ツァール「どうし……たの」
ゼノン「あぁ?」
ツァールがコーヒーを淹れてくれた
コイツは根暗で、めったに人と話そうとはしないやつだが、俺とはぼそぼそと小さい声で喋る
小さい頃からコイツと変な施設で育てられ、大体の時間を一緒にいたから、まぁ仲は悪くない
ツァール「なんで……"ヘル"を……」
ゼノン「あぁ、さっきの話か?」
コーヒーに角砂糖をぼとぼとと入れながら答える
私の淹れたものが飲めないのか、と言いたげな表情だったが、無視してコーヒーを混ぜる
苦いものは嫌いだ
ゼノン「なんつーの? その、あれだ……。あいつ強そうじゃん?」
咄嗟に理由が浮かんでこず、しどろもどろになる


601:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:10:17.76 ID:lSAjZWfl0
ツァール「強く……ない……」
相変わらずの抑揚の無い声
たしかに、たとえMS相手に墜ちないとは言っても、倒せなければ意味が無いし、いずれ墜ちる
理由は、もっと不純なものだった
艶やかな黒髪、整った顔立ち、柔らかそうな唇、伸びやかな肢体
ヒトメボレ、というやつだ
まぁ、こんなことこいつには隠さなくてもいいか
ゼノン「ま……なんだ。要は、あの女を俺の女にしたいってわけ。だから、死なれたら困るだろ?」
惚れただのなんだのというこっぱずかしい部分は言わなかったが、間違いではない
そう言うと、ツァールは光のない暗い目を、髪の間から覗かせた
ツァール「気持ち……悪い……」
ゼノン「なにぃ!?」
ったく、こいつに言った俺が馬鹿だったぜ


603:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:13:03.43 ID:lSAjZWfl0
( ^ω^)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ≪好きだよ、ブーン≫
あの少女が、何を想ってそんなことを言ったのか、僕にはわからない
いや、知りたくない、わかりたくない
あの頭痛は、未だに止んでいなかった
医務室へ行こうかとも思ったが、他人と喋るのは苦痛だった
少し前にショボンが様子を見にきたが、無視した
『以前のあなたが守りたかったものを、今のあなたが壊すのは、悲しいわ』
壊してしまった
昔の僕が、守りたかったものを、僕が
その時、部屋の自動扉が開いた


604:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:15:40.74 ID:lSAjZWfl0
少年は、壊れそうになっていた
私は"レイジ"に、誰が乗っていたかは知らない
彼が何を思っているのかも、知らない
少年は、壊れそうになっていた
だがそれは、私が心の奥底で望んでいたものではなかったのか?
マナ「内藤さん……」
( ^ω^)「マナちゃん……」
ブーンが、そっと顔を上げた
その表情に、心が痛む
マナ「"レイジ"に、誰が乗っていたんですか……?」
≪内藤さん、記憶を無くす前に仲間だった人と戦っているんです!≫
ブーンが詳しくを語らずとも、あのMSに大切な人が乗っていたのであろうことはわかっている
思えば、本当はあの時に止めるべきだったんだ
でも、この人は私の兄の……


605:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:17:28.89 ID:lSAjZWfl0
( ^ω^)「墜ちる前に、好きだよって、言われたお……」
マナ「…………」
( ^ω^)「きっと昔、記憶を無くす前に、僕が好きだった人なんだ……」
マナ「知っていたんですか? それを……」
ブーンは、俯いた
知っていたんだ、その女性のことを
あの捕虜の女性に聞いたのか、他になにかあったのか
( ^ω^)「でも、仕方ないじゃないか! マナちゃんを守るためには、倒すしかないんだ!」
ブーンが血を吐き出すように言った
殺すのも殺されるのも、悲しいのも悲しまれるのも、もうたくさんだ
そう思っていたはずだった
それなのに私は、この少年を受け入れ、殺し合いをさせた
マナ「……私のせいに、しないで下さい」
( ^ω^)「……え?」
マナ「そんな大切な人を、なんで殺すんですか……」
( ^ω^)「マナ……ちゃん?」
ブーンが、理解できないといった表情をした
もう、何もかも遅い
マナ「もう、守ってくれなくても、結構ですから……」
私のしてきたことで、恨みで、結末は暗黒にできた
部屋を、逃げ出すように出る
私の望んでいたことの結末は、こんなものだったのか?
きっと違う
私は、本当は……でも―――
もう、遅すぎた


606:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:20:06.87 ID:lSAjZWfl0
マナが部屋から出て行って、再び部屋の中で一人になった
強化ガラスを雨が打つ音が聞こえる
『……私のせいに、しないで下さい』
( ^ω^)「そんなつもりじゃ、なかったのに……」
『間違っていることに何を重ねても、正しくなったりはしない!』
敵から味方を守ること、それすらも間違っているということなのだろうか
守ろうと必死で頑張ってきたのに
答えが見つからない
どうすればいいのかわからない
あの少女を殺したことは、酷いこと?
マナは、だから……?


608:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:21:52.37 ID:lSAjZWfl0
知らず知らずのうちに、ハンガーへと足を運んでいた
"アブソリュート"を見上げる
完全無欠なんて、嘘だったんだ
何かを守るために、何かを犠牲にして
所詮この世は、ゼロサスゲームなのだろうか
整備士「あ、おい兄ちゃん! なにやってんだ!」
呼び止める声を無視して、コックピットへとのぼった
予備のパーツが用意されていたのか、失った肢体は元に戻っていた
しかし、背中のバーニアスラスターは取り外され、翼はなかった
外部スピーカーをオンにして、言う
( ^ω^)「"アブソリュート"から離れてください。発進します」
管制から制止の声がかかったが、無視して歩き出す
整備士の人間は、"アブソリュート"が動き出したのを見ると、即座に逃げていった
リニアカタパルトへ向かうも、ハッチは閉まっている
( ^ω^)「ハッチを開けてください。お願いします」
通信回線を開き、呼びかける
ビームライフルで吹き飛ばしてもよかったが、それは出来ればしたくなかった


609:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:24:49.20 ID:lSAjZWfl0
CIC<なーにをしてるのかね、君は>
モニターの向こうで、CICが顔を出した
( ^ω^)「……ハッチを、開けてください」
CICは少し考えるように、目を細める
CIC<……理由を言ってもらえるかなー?>
CICは、ブリッジのメインモニターにこちらの画像を出していないのか、艦長が出てこなかった
( ^ω^)「……"レイジ"を、回収しに行きたいんです」
アイベルは生きていた
MSの腹部を切り裂き、爆散したにもかかわらず
もしかしたら、"レイジ"も……
CIC<ふーん……。ま、いいか>
CICはそう言って振り向くと、何かを誰かに喋った
ハッチが開く
CIC<いい、ちゃんと帰ってくるんだよ?>
彼女はウインクをすると、通信を切った
( ^ω^)「……内藤……。……ブーン、行きます」
日も落ち、漆黒を雲の間から微かに照らす月明かりと、悲しい雨の中を、"アブソリュート"は駆けていった


610:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:26:47.65 ID:lSAjZWfl0
エリュシオンの領空に差し掛かったところで、レーダーが死んだ
領空侵犯になってしまうが、レーダーすら殺す通信妨害をしているのなら、向こうもおそらくわからないだろう
黒の海を、採光設定を変えて見回す
辺りには、MSの破片が浮かんでいた
( ^ω^)「見つかるわけないのに……」
それでも、せめて罪滅ぼしになるだろうか
別に、殺したかったわけじゃない
彼女が憎かったわけでもない
ただ、立ちふさがったから、どけただけだ
それで誰が傷ついても、悲しんでも、僕を恨もうとも、関係ないと、そう思っていた
( ^ω^)「やっぱり、助かってるわけないお……」
諦めて、機体を翻す
その時、一筋の光条が機体を掠めていった
( ^ω^)「……"ヘイト"……」
雷が、機影を象った


611:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:29:45.26 ID:lSAjZWfl0
(´・ω・`)「コロニーを!?」
レギン「あぁ、そうだ」
高速艦"リンドブルム"へ移り、艦長であるレギンと二人で膝を突き合わせていた
トラロクンへ艦を、としか指示を受けていなかったため、レギンに戦力の集中の理由を尋ねた
MSの量産を期に、宇宙連合を叩き潰す
まずは手始めに、はずれにあるコロニーに奇襲をかけるという作戦に、"イシューリエル"は組み込まれていた
(´・ω・`)「奇襲って……。降伏した場合はどうするんですか?」
レギン「降伏? する前にそこの連中は全滅だ。問題はない」
問題ない?
問題がないわけがない
人の命をなんだと思っているのだ
(´・ω・`)「僕が言いたいのは、全滅させる必要が、本当にあるのかということだ!」
レギン「……口を慎みたまえ。いくら議会から贔屓をされているとはいえ、階級は私のほうが上なのだぞ」
この男を殴ってやりたかったが、何の得にもならないだろうと気持を抑える
こんな小物では、作戦に意義も唱えることすら出来ない
いや、この人間は異議を唱えることはしないだろう
盲目的に敵を殺すことだけ考える、狂った人種
ヴィネは……アイツでは、無理だな


612:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:31:51.82 ID:lSAjZWfl0
レギン「まぁ、今後は貴艦と行動を共にするのだ。よろしく頼むぞ」
慇懃無礼な態度で、手を伸ばしてきた
男を睨みつけながら、手を伸ばす
その時、備え付けの通信機に、通信が入った
クルー<艦長、"イシューリエル"所属"アブソリュート"が、無断で艦を離れたそうです>
レギン「そうか、わかった」
通信の内容に、耳を疑う
何故、彼がそんなことを―――
レギン「ということだ。所詮は、宇宙民なのだよ、彼も」
完全に彼を侮るような口調で、鼻で笑いながらレギンが言った
その男を力いっぱいに殴り倒して、"イシューリエル"へと急いだ


613:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:33:17.62 ID:lSAjZWfl0
"グラム"を構える
単機で移動しているのを確認し、隠密に迎撃にきてみれば、"アブソリュート"は漂っていた
翼を無くし、力なくそれは、辺りを彷徨っている
こんな所に、なんのつもりだ
('A`)「乗っているのは、お前か、ブーン?」
( ^ω^)<うん……>
('A`)「覚悟は、出来ているんだな……?」
"アブソリュート"が、ビームサーベルを抜き払った
もうこれ以上、誰も殺させるわけにはいかない
あいつは、俺たちからツンを奪っていった
もう、何もかも遅いかもしれないが
フットペダルを踏み込み、機体を走らせる
今度こそ、お前を殺す


614:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:35:18.82 ID:lSAjZWfl0
"グラム"で切りかかってくる"ヘイト"を、呆然と眺める
これは、何のための戦いだろうか
もう守るべき人も、いない
少女を殺してしまったから、戦っている
不毛―――
振り下ろされた断罪の剣を、力なく受ける
弾き飛ばされ、サーベルは手から離れていく
落下しながら、ビームライフルを放つ
その一射は大きく外れ、雨雲に飲み込まれていった
彼を殺して、何が変わる?
彼を殺せば、彼を奪われた新しい彼が、再びくるだけだ
"ヘイト"は一瞬"グラム"をだらりとたらした後、再び向かってきた
もう一本のビームサーベルを抜き、出力させる
('A`)<うおぁぁぁぁぁぁ!>
サーベルが、手から滑り落ちていく
( ^ω^)「ごめんね……」
剣が、機体に吸い込まれていった


615:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:37:47.39 ID:lSAjZWfl0
胸に"グラム"を突き刺したまま、"アブソリュート"は落ちていった
海へ落ち、高く飛沫を上げる
( ^ω^)<ごめんね……>
パシパシと、海水がモニターを叩く
何が、ごめん、なのだ?
そうだ、あいつはツンを殺したから
俺は、仇を討ったんだ
('A`)「…………」
俺は仇を討った
それで―――?
艦へ戻り、MSから降りて、誰とも話をせずに自室へ戻った
身を焦がしていた殺意は消沈し、いつかの感覚で、体が満ちていた
なんなんだ、この気持ちは……


616:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:38:16.79 ID:lSAjZWfl0
アイベル「ドク……大丈夫……?」
心配げな表情をして、アイベルが部屋に入ってきた
その表情には、色濃く悲しみをたたえていた
おそらくもう、戦闘の顛末は知っているのだろう
('A`)「ええ……大丈夫、です」
微笑みを作って、彼女に向ける
しかし、すぐにその表情は崩れてしまう
アイベルも悲しげに顔を歪めると、涙をぽろぽろとこぼした
いたたまれなくなって、抱き寄せる
部屋の中に、女のすすり泣きだけが響く
敵を下し、犠牲を払って守り抜いた「世界」は、空虚だった


629:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:43:51.03 ID:lSAjZWfl0
艦長席に座り、前方にある軍事基地を見つめる
管制からの指示を仰ぎ、"イシューリエル"は制動をかけた
(´・ω・`)「別命あるまで待機。僕は、軍会議に行ってくるから」
トラロクンへと艦を運ぶという任は達した
あとは僕が行って、詳細を聞きに行かねばならない
ドックへ"イシューリエル"を着艦させ、辺りのクルーの緊張もふわりと解けた
それでも、辺りには重苦しい空気が漂っていた
和気藹々としていたブリッジも、話そうとするものは誰もいなかった
"アブソリュート"が、大破、撃沈したと、艦に戻った時にエリュシオンから通信が入っていた
領空を侵犯したが、特に何もする様子がなかったので放置していたところ、宇宙連合のMSが現われ、撃墜された
自国への被害はなかったので、この件は不問
MSの残骸の処理も、エリュシオンが行ってくれるそうだ
それにしても何故、彼がそんなことを……?
結果的に不意をうたれ、彼は死んだ
報われない


632:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:45:46.87 ID:lSAjZWfl0
人当たりのいい、思いやりのある優しい少年だった
クルーのために、初対面だというのに自ら剣を取り、戦ってくれた
それなのに僕は……
気持ちの悪いことだと、そしてもっともらしい理由をつけて、殺すことから逃げることを正当化して
結果が、これだ
思えばあの時、僕がためらわず艦を沈めておけば、こんなことにはならなかったかもしれない
殺せなかったから、殺されてしまった
自責の念で、拳を強く握る
ブリッジを後にすると、CICが後をついてきた
CIC「ねぇ、艦長……」
(´・ω・`)「……どうした?」
CIC「ハッチを開けたの、私なんです……」
いつもの陽気さが、感じられなかった
いつもなら率先して場を盛り上げてくれるムードメーカーの彼女が、いつになく沈んでいると思ったら、そういうことか
CIC「まさか、こんなことになるなんて、思ってなくて……」
くしゃりと顔を歪める
彼女のせいではない
きっと、彼はハッチを開けてくれる気配がなければ、破壊してでも飛び立っていっただろう
彼は、意志の強い子だから
服のすそをつかんで震えているCICの肩を、ポンと叩いてやる
彼女は、わかっていたのだ
だからせめて責が軽くなるようにと、ハッチを開けてやったのだ


633:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:47:51.21 ID:lSAjZWfl0
(´・ω・`)「気にしなくていい。お前のせいじゃない」
CIC「艦長……」
(´・ω・`)「それより、他に何か言ってはいなかったか?」
もしかしたら、彼女は何かを聞いているかもしれない
一体、彼は何を考えていたのだろうか
CIC「"レイジ"の回収をしたいって、そう言ってました」
"レイジ"?
彼が戦闘で墜としたMSか
あれは、確か……
≪内藤さん、記憶を無くす前に仲間だった人と戦っているんです!≫
仲間の誰かを、殺してしまったのか……
彼は微かな希望にすがり、自責で艦を飛び出した
そして、墜ちた
彼女にそうか、と言い、微笑みかける
(´・ω・`)「……彼のためにも、頑張ろう。な?」
頑張る、か
彼は頑張ってしまったために、失って、自らも失った
僕達も、何かを失う時が、いずれくるのだろうか
少しだけ元気を取り戻したCICと別れ、頑張るために、軍会議へと向かった


635:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:51:04.47 ID:lSAjZWfl0
ヴィネ「MSの量産に成功し、宇宙連合軍など、いまや我々の敵ではありません。これを期に戦力を集中させ、一気に殲滅戦を仕掛けます」
そう、ヴィネの父が言った
実際に口にしているのはヴィネだが、裏で彼女の父が指示を出している
公の場に彼は、全くといっていいほど姿を現さない
かくいう僕も、未だにオットフリート・ミュラーを見たことがない
ヴィネに話は聞いていたが、彼女も命令されているのか、父の写真すら見せてはくれなかった
ヴィネ「まず手始めに、宇宙連合領地のはずれにあるコロニーへ、奇襲をかけます。今作戦は、こちらの戦力を宇宙連合に見せ付けることが目的です。"イシューリエル"と"リンドブルム"を主力に、確実且つ早急にコロニーを大破してください」
口からすらすらと、一片の濁りなく言葉が出てくる
オットフリートのことを知らない人間から見れば、彼女が立案し、そして指示を出していると思い込むだろう
そして、全ての感情は、彼女へ向かう
ヴィネ「この作戦が成功した暁には、核の使用を制限する装置のあるコロニーを破壊します。そして、その後は再び核を放ち、宇宙民を一掃します」
そうヴィネが言い放つと、辺りでざわめきが起こった
正気、なのだろうか……
オットフリートは、そして、ヴィネも
降伏させるつもりは、ないらしい


637:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:51:54.46 ID:lSAjZWfl0
何故そこまでする必要があるのだろう
ただ彼等は、発展していっただけ
疑惑を自分勝手に確信に変え、攻撃を仕掛けたのは、こちらだ
気持が、悪い
ヴィネ「我々を脅かさんとする者どもを滅ぼす好機です。各々、全力を尽くしてください」
そうヴィネが締めくくり、場はお開きとなった
ヴィネにへこへことしながら部屋を後にする、それなりの立場の人間たちを横目に、溜め息をつく
異を唱えるものは、誰もいないのか……
ヴィネ「ショボン!」
全ての人間が出て行ったのを確認してから、ヴィネが近づいてきた
嬉しそうに、微笑んでいる
誰も何も、疑問を感じていないのか


639:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:55:32.04 ID:lSAjZWfl0
ヴィネ「内藤君が……!?」
議長室へと場所を移し、そこでショボンはブーンのことを伝えた
先程彼女が言っていたように、主力と称された艦が"イシューリエル"と"リンドブルム"の2艦になっていたことからわかるように、"アブソリュート"のいない今、所詮"イシューリエル"はただの高速艦でしかない
おそらく、"イシューリエル"の役は、"リンドブルム"が継ぐだろう
ヴィネに目を向けると、顔を俯けている
ヴィネ「私が、あんなことしなかったら……」
あの時のことをいっているのか
ブーンに、艦のために戦ってくれと、そう言って引き止めたこと
(´・ω・`)「お前のせいじゃないよ……」
彼は、自分の意思で残ったのだ
頼まれただけで、昔の仲間と殺し合いなど、出来やしない
彼の何が、そうさせたのだろう


641:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/16(木) 23:57:35.54 ID:lSAjZWfl0
ヴィネは顔を上げると、泣きそうな顔でこちらを見つめていた
ヴィネ「ねぇ、ショボンは死なないよね……?」
そう言って、服にしがみついて、胸に顔をうずめる
ヴィネ「私、嫌よ……? あなたが死ぬなんて……!」
ヴィネが、僕の胸で泣き出す
いつもなら抱きしめて、大丈夫だと、心配ないと、安心さてあげる
しかし、今はそんな気には、なれなかった
その涙を、何故僕だけに向ける?
(´・ω・`)「お前は……」
ヴィネ「ねぇ! あの子がいないなら、あなたの艦をもっと強くすれば、あなたは死なないわよね!?」
(´・ω・`)「…………」
こいつには、僕しか見えていない
それも、仕方のないことではある
彼女は今この時間のために、父のために造られた、悲しい存在
僕がいることで、僕にすがることで、自分の場所を守っている、自分を確かめている
眉根を寄せる
僕は、この女性に、なにを言ってあげるべきなのだろうか
なにをしてあげるべきなのだろうか
答えは、見えている


642:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/17(金) 00:00:51.28 ID:xtTLUL5G0
突出していた"ヘル"を、ビームライフルで狙い撃ちにする
ビームは頭部に吸い込まれ、カメラを爆散させた
間髪いれず横一文字に"グラム"で薙ぎ、破壊する
地球連合MSが、量産ラインに乗ってしまった
ドク達は、量産されたMSを戦場へ向かわせないようにするため、工業都市イーダリルへ攻撃を仕掛けていた
辺りを見回すと、"ストラス"が4機の"ヘル"に囲まれ、翻弄されていた
('A`)「くっ! 蚊トンボがぁぁぁ!」
ビームライフルを連射しながら向かっていく
"ヘル"はこちらに気付くと、パッと散開した
先程から、何機倒してもきりがない
何処からともなく現われては、こちらに向けてビームを放ってくる
装備は"ハルパス"と変わらないものの、機体のレスポンスは"ヘイト"に勝るとも劣らない
差をつけているのは、操縦者の能力
戦争が長引き、パイロットの錬度が上がってきたら、こちらの勝ちは薄くなってしまう
それに、エリュシオンで見た紫のMS
……よくない


643:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/17(金) 00:01:43.93 ID:xtTLUL5G0
近くにいた"ヘル"へと機体を急接近させ、そして鋭角的に急上昇をする
Gで体がねじれそうになる
眼下で、"ヘル"が味方の放ったビームに打ち抜かれ、爆散した
やはり、パイロットはシミュレーションも踏んでいない
高い位置を取り、ロケットアンカー"ディファイアント"を放つ
一機の"ヘル"のビームライフルを奪い、両の手に構え、連射する
付近に"ヘル"はいなくなった
('A`)「はぁ……はぁ……」
大切な人、それを守るためなら―――
機体を翻し、工場と思しき場所へ機体を向かわせる
工場の中から、"ヘル"が大量に吐き出された
それに眉を寄せる
しかし、大半の"ヘル"はまともに動くことも出来ず、辺りを飛び回るだけだった
こちらに銃口を向けている"ヘル"に、先程奪ったビームライフルを投げつける
出来た隙を逃さず、輪切りにする
それに怖気ずいたように、"ヘル"は逃げ出そうとする
一機に"ディファイアント"を射出し、引き寄せ、コックピットを貫く
それを振り払い、工場にビームライフルを向ける
すると、"ヘル"が武器も構えず突っ込んできた
こいつら、民間人か……!


644:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/17(金) 00:02:53.79 ID:xtTLUL5G0
高く飛び上がって避け、銃口を向ける
一瞬、ためらう
彼等は、何でこんな無茶をしたのだろう
決まっている
俺と同じだ
"ヘル"を片端から撃ち落としていく
後ろで待機していた宇宙連合のMSたちが、一斉に銃口を工場へ向けた
―――守るためなら、敵を殺さなくちゃいけない
ブーンは、何かを守りたかったんだ
だからツンを殺した
俺と、何が違う?
高々と空を覆う爆炎と、仲間達の歓声を聞きながら、ドクは顔を俯けた


646:ダメな子 ◆L3bTxC/JR6 :2006/03/17(金) 00:05:42.92 ID:xtTLUL5G0
暗く深い穴の中で、マナは膝を抱いて、白銀のナイフを握っていた
辺りには怒号と悲鳴が、渦巻いている
その合唱が頭に響いて、耳を塞ぐ
すると、誰かが近づいてきて、マナに向けてナイフを振り上げた
その血に塗れたのナイフの鈍い輝きが恐ろしくて、目を固く結ぶ
その時、誰かがマナの前に立ちふさがって、その誰かの胸にナイフを刺した
そして、その誰かはマナを振り返り、微笑んで手を差し伸べた
返り血で赤く染まった、その顔は―――
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【2006/03/16 23:51 】 | ( ^ω^)ブーンはガンダムのパイロットのようです | comment(0) | trackback(0)

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